韓国文化院で
日韓国交正常化50周年記念
1960・70年代日韓名作映画祭
開催。
日韓の国交が正常化された1960年代から1970年代は
韓国映画界も日本映画界も
多作・隆盛から衰退へという大きな変化を経験。

全ての作品を観に駆け付ける時間はなかったけれど...
まずは
紛失していたフィルムが2007年に香港で発見された
ユ・ヒョンモク監督『糞禮記 분례기』(1971年)を。

あらすじ

母親が厠で彼女を産み落としたことから
糞禮 분례と名付けられた貧しい家の長女ブンレ(ユン・ジョンヒ)は
山でヨンパル(ホ・ジャンガン)に襲われるなど
薄幸な人生を歩んで来たが
ついに食堂のおかみ(サ・ミジャ)の
息子ヨンチョル(イ・スンジェ)の後妻になることに。

ところが夫は博打好きで一切家庭を顧みない。
ある日全財産を博打で失った夫は
ブンレを激しく打って家から追い出したが...

(以下、映画の核心に触れる部分もございます)

ギ・ド・モーパッサンの「女の一生 Une vie」の趣も。

原作、方榮雄 방영웅 の「糞禮記 분례기」(1967年)は未読だが...
方榮雄の故郷、禮山が舞台の小説で
ヒロインの糞禮という名は
禮山の糞という意味もあるのかもしれない。

原作は土俗的なニヒリズムと共に
田舎に住む人々の不幸な生活を詩的に描いているそうだが...

心の準備なく突然訪れた初恋とも言えない初恋のせいか
少女から女性への過渡期の
純粋さ純真さはかなさと
なんとかこの環境でも逞しく生き抜こうとする気丈さの間で
揺れるアンビバレントさ。
そのバランスが崩れようとする時
脆く弱い女性にとってブンレにとっては
過酷過ぎる運命だったと哀切な余韻も。
「おませなつつじ」という表現や
薪の中の松の葉の香りでヨンパルを思い出すなど
詩的な表現が随所に。

イム・サンス監督リメイク版『下女』チョン・ドヨン主演『ハウスメイド』 の冒頭、
飛び降りようとしている女はチョン・ドヨン。
そしてそれを物見高く、見物しようとする女(イ・ユニ)もチョン・ドヨン。
他人事、絵空事、一炊の夢のような出来事が
自分事、現実、破綻した夢となる展開を予測させる
...
と記していた演出と相似する、想起させる。
村を彷徨う狂った女にブンレは出会うが
結局ブンレも狂ってしまう、同じようになってしまうのだ。

狂女の運命を先に視てしまう。狂女の運命が連鎖するかのように遍在する。
運命の輪が次に自分に降りかかるとも知らず、降りかかってくる不条理...
一種、物狂能のような此岸を超えた哀切の余韻を残す。

映画の中に「火の用心」という日本語の貼り紙や
橋の近くを歩く着物姿の女性が登場するのを観て
時代設定が気になった。

映画祭ゲストはブンレの姑役のサ・ミジャさん。
少女時代ユナ主演「君は僕の運命」出演等
最近は多数のドラマやバラエティで活躍。

funreiki sa mija.jpg

「『あらだめじゃないの』と、
ほんとうは姑はやさしく嫁に話しかけていたのに...」
中国語吹替えになって
その語調の激しさから
自身の演じたキャラクターとギャップを感じた、と語る。

英語字幕では10月の月と歌われ
日本語字幕では冬から春への季節のうつろいが歌われ。
映画に流れる歌の歌詞で
主人公の心情を伝えもするが...
字幕には落差、ギャップがあるもよう。
最後の歌は
英語字幕では
I'll hate you forever
日本語字幕ではあなたを想うとなっていて
中国語吹替えへの謎は深まるばかり。
最後の歌だけ男声だった(ヨンパル?)。

カラー映画にも関わらず前半は退色多く
フィルムを別のカメラで写した?別のレンズを通したような
ピントがずれたように不鮮明なコマも一部あったり...
貴重な作品を観ることが出来ただけでよかった!けれど。

サ・ミジャさんは
ユンボギの日記『あの空にも悲しみが』キム・スヨン監督
日韓合作映画『望郷』?(1966年)や
『あれがソウルの空だ』(1970年)で来日もしていたそう。

恐らく日本映画界もその頃は同じく大忙しだったろうが...
1968年~1975年頃の
短時間で多数の映画を製作する多作期、
「韓国映画黄金期」についての証言も印象的だった。
一人の俳優が5、6本掛け持ちで同時に撮影、とにかく疲れた!と。
現在の映画業界との相違を
リアルに伝えて下さる方がいらして貴重な時間。

さて、本作は
イ・サンの祖父、英祖 等王の役も板についている
イ・スンジェ の悪役ぶりも見もの。

ホ・ジャンガンの太い眉、ふてぶてしい位の無表情も印象的。
片岡球子風に言えば、その面構 が...
ヨンパルは自己中心でぶっきらぼうに見え
心中何を考えているかわからないキャラクターだが
最後にブンレに駆け寄る姿には一筋の愛情が...(/_;)

主演ユン・ジョンヒの最近作は
イ・チャンドン監督『ポエトリー』

愛嬌ある笑顔など独特の魅力がある方。
キム・スヨン監督、シン・ソンイルと共演の『霧 안개』 でも
愛らしかった...のでまた書きます!

糞禮 분례は賤名 천명 というわけではなさそうですね...

同日に上映されたチョン・ソヨン監督『憎くてももう一度 미워도 다시한번』も
不幸な女性が登場するが...
小説を原作とした『糞禮記』とは(韓国映画史的にも)文脈が異なるので別途記す予定...
『あの空にも悲しみが』 ではいい先生だったシン・ヨンギュンが
『憎くてももう一度』では...д・)

to be continued...!?

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