あらすじ

軍の教育隊長キム・ジンピョン大佐(ソン・スンホン)と
妻イ・スクチン(チョ・ヨジョン)が暮らす軍官舎に
部下キョン・ウジン大尉(オン・ジュワン)と
チョン・ガフン(イム・ジヨン)夫妻が越して来た。
物怖じせず、堂々として美しいガフンから
ジンピョンは目が離せなくなるが...

『恋の罠 淫乱書生 음란서생 Forbidden Quest』
『春香秘伝 The Servant 房子伝 방자전』の
キム・デウ監督『情愛中毒 인간중독(原題=人間中毒) Obsessed』(2013年)

(以下、映画の核心に触れる部分もございます)

『ラブストーリー 클래식』 もベトナム戦争で傷ついた帰還兵を描いていたが...
この映画で描かれているように
戦争PTSD(当時はPTSDとは認識されず、単なる精神病とされていただろう...が)に
悩む兵は多かったのでは...とあらためて考えさせられた。

戦争に傷ついた者同士が引き寄せられる...
男(ジンピョン)は残虐に仲間の首を斬られ
自身も同じ行為をやり返した過去
(やられたからやり返すという考え方は好きではないが
戦場ではやむを得ないのか...)。
女(ガフン)は幼い頃朝鮮戦争(6.25)で父を失い
母は娘をおいて逃げてしまったというトラウマを心の奥底に抱えて。
ベトナム戦争で精神的に傷ついた男と
朝鮮戦争で心が傷ついた女が結ばれる...
ひと目ぼれという衝動的な恋でありながら
深層心理的には
同じ痛みを抱える者同士の結び付きが示唆されている。

その意味では
マーティン・スコセッシ監督『Hugo ヒューゴの不思議な発明』 を想起。
脇役の、駅の警備員は第一次世界大戦で弟と自身の片足を失い
彼と出会った花屋の彼女は同じ戦争で兄を失っていた...
余談ですが
マーティン・スコセッシ監督は
総指揮したドラマ「ボードウォーク・エンパイア」でも
戦争帰還者のPTSDを描いていた。

アメリカの作品も思い出しながら
戦時下や戦後の人間関係、心と恋、生は
戦争の影響を多く受けている、傷ついた人間が描かれている、
と伝わって来る。
イム社長(ユ・ヘジン)も傷ついているし
チョ・ハクス(ペ・ソンウ)も無軌道になっている...
そこがまず大きかった。

もうひとつ印象的なのは
1969年という時代を描くにあたって
日本語混じりの軍隊内の会話をはじめ
言語スイッチ、言語間の行き来・揺らぎ、シフト、使い分け、
繊細な言葉遣いの変化。
60年代といえば
かつて日本植民地時代に日本帝国軍や兵学校に所属させられた人々が
上層部にいるだろう。
彼らのつかう日本語、そして本気で怒っている時は
同じ意味の単語でも日本語は出て来ず韓国語をつかっている軍団長。
言葉遣いの変化で
心理の変化を伝える描写が印象的だった。
言葉遣いの二重性に影のように寄り添って見える心理の二重性、人間の二重性。
本音と建て前
オフィシャルで出て来る統治時代の残滓的な日本語と
プライベートな心情をあふれさせる韓国語。
小学生の時からソウル言葉です、と言い切るも
興奮すると故郷釜山のなまりでしゃべっているキョン・ウジンも。
まだベトナムから帰還できていないと思い込んでいて
病院で怯えつづける帰還兵は殺さないでくれ助けてくれとベトナム語で懇願し
彼の本能的なベトナム語の叫びに
帰国しても彼の中では戦争が終わっていない、
彼の心の深い傷が浮き彫りにされたり。

一方、ガフンは
「愛してはいるけれど
家を出るほどすべてを捨てるほどは愛していない」と言い切る。
ふたりだけの秘密の時間の中での、プライベートで一途な愛の言葉が
ふたりの恋が公になった後の
オフィシャルなコンテクスト下で
温度差を、温度差のある想いを本音を浮き上がらせる。
変質したのか低温な愛の言葉が
スイッチしてしまった心を表して...

さまざまな人が
二種類以上の言葉、言語、言葉遣いで
自身の本音や建て前の間で行き来し、揺らいでいる姿
グラデーションが積み重ねられ折り重ねられ
当時の揺れる韓国、時代をも伝えているようで
興味深かった。

韓国版『ラスト、コーション』 とも言われているようだが
『ラスト、コーション』の打算的で即物的なラブシーンは
愛情よりは色のみで
会えば会うほど女性が傷ついているようにも感じられ
観ている自分も傷ついた。
しかし、『色、戒』よりは避けられない恋、運命的な純愛、
出会ってしまった本当の恋という感じも...一途すぎるけれど。

華僑というマイノリティ、ガフンと
戦争に傷つかず、出世街道、将軍への階段を昇る周囲の軍人らしい軍人たちには
違和感と疎外感を感じていそうなはみ出し者ジンピョンの結び付きは
偶然ではなく必然、運命的だったと言えなくはないだろうか...

華僑と恋をする映画は過去にあったかしら...
タイ人のマイ・ラティマを可愛いと言って愛した男の映画 はあった。
「非頂上会談」 や「ハロー異邦人」と、在住外国人がトークで活躍する番組が今流行っている韓国で...

華僑、中国系韓国人の『新しき世界』

古くは『子猫をお願い』 の華僑の双子少女。
短編にも華僑が...

イム・ジヨンは短編では女子大生役


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