東京フィルメックスTOKYO FILMeX 2012で
第69回ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した
김기덕 Kim Ki duk『ピエタ/PIETA』が日本初上映されました(観客賞も受賞!)。

10月に釜山国際映画祭で観ましたが ...
上映後のQ&Aのようすも追記して再掲。

釜山での上映は何回かありましたが
私が行った回は김기덕監督が上映後に丁寧に観客の質問に答えてくださっただけでなく、
김기덕監督サイン入り映画祭カタログが抽選で5名の方にプレゼントされました♡(≧∀≦*)
なんとExciting!!(抽選はずれました...)
釜山映画祭は何度か行っていますが...
上映後のQ&Aで観客にプレゼントがある、監督のサイン入りプレゼントがある、というのは初めて。
もっと前から釜山に行っている友人に聞いても
プレゼントは聞いたことがない、そうです。

pieta1.jpg

あらすじ

借金取り立て屋ガンド(イ・ジョンジン)は
今日も下町の債務者を訪れる。
相手が借金を返済できないとわかると
暴力を振るってケガをさせ
保険金の支払いから借金を返済させるという冷酷ぶり。

そんな日々を送るガンドのところにある日突然女(チョ・ミンス)が現れる。
女は
私はお前の母親だと名乗ってガンドの世話をかいがいしく始めたが...

(以下、物語の核心に言及する記述もございます)

監督が
「ガンドは成長しきっていない。
15、16歳くらいの少年のようなところもある」
と話していた通り、
極悪非道な借金の取り立て屋でありながら
どこか純粋なところのあるガンド。

母親と名乗る女はほんとうに自分の母親なのかどうか
ほとんど疑いもせず信じきってしまう。

一方、復讐を誓う女も
冷徹な復讐者になりきれない。
母性を捨てきれない、
どこか無垢で純粋、純心さが伝わってきた。
ストーリーだけ追うと
清らかな...という言葉はそぐわないようだが
主人公ふたりは
取り立て屋の鬼でもなく復讐の鬼でもなく...
どこか非道になりきれない、
純な心や情、弱さを持ち合わせていて
その心が
清らかに響いて、通奏しているようにも感じられた。

김기덕監督の作品は
すきな作品もあれば苦手な作品もあるけれど...
そんなわけで『ピエタ』はなかなか気に入った。

映画の中で
「清渓川を上から見下ろしたことがあるか」
といったセリフが登場する。
清渓川 、とくに鍾路あたりを。

そのあたりは家族経営の多い小規模な工場密集地。小さな部品だけを作っているような工場。
ガンドの会社に借金を申し込んでいたのは
ほとんどがそういった零細な町工場の経営者。
日々資金繰りに追われ
100ウォンにもならないような小さな部品を作り続け
疲弊し
借金をし
そして...
借金が返せなくなる。

上空から俯瞰する鳥瞰する小さな工場が密集する地域。
それは過去のようにも遠くのようにも見える。
地上からは
這うように迷路をめぐるようにも動くカメラ。
手の届く、近くにある現在。地上に偏在する世界。
その演出は...
『アリラン』 と対比できる。

『アリラン』 では
私小説のように
김기덕監督自身の少年時代、来し方を思わせるような形で
工具などが登場していたが...
『ピエタ』では
韓国があるいは世界が抱える断絶の問題として
より広い地平で社会問題としての視座と地平を孕みながら
工場や工具を見せてもいる。
『アリラン』では自分史の一部として、
少年時代の一部を占めた工具や機械、その作動や動作だったが、
『ピエタ』では市井の民の生としての、痛み悲しみ呻きとしての工具、機械、その作動や動作に
視界が地平が拡がっている。

監督自身
映画上映後のトークで
「そういった工場の機械、そしてその作動こそが生そのもの」
と語っていた。

監督の少年時代と
現代も生が息づき、悲しみと痛み呻き声さえ聞こえてきそうな清渓川、鍾路あたりの工場の人々への
視点と視線が時を越えてリンクし結びつきながら...
世界の断絶という現代的な問題、
底辺の人々へのまなざしは社会性普遍性を備えて
人間の生への深い理解を湛えながら心に余韻を残す。

labelbox_20121101_233528.jpg

今回
文語体でセリフを書いていたので
ちょっと演劇っぽいかもしれないとも語る監督。

カメラの動きが少し『アーメン』 を思わせるなぁと
考えながら見ていたので
今回もエンド・クレジットをしっかり見たところ...
Bカメラは김기덕監督でした。
『アリラン』や『アーメン』の(カメラ)経験(!?)も生かされているという印象も。

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