この本は何か教訓を得る、ということより、単純にファンタジーが面白くて読んだ、という方が感想としては近い。作者の中でも随分とSF風の作品である。


  感想を書いているのは2巻の方であるが、1巻の方はかなり昔から読んだ記憶がある。小学生の頃だっただろうか、図書室で見つけたこの本のタイトルに心惹かれたのだ。かつ、この本が作者・村山早紀との初めての出会いの本である。
  小学生の私は一瞬でこの本に心を掴まれた。何度読んでも不思議なお話、そして勇気を貰えるこの作品を小学生の間に何度借りて読んだことであろうか。しかし、その本はいつの間にか本棚から消えてしまっていた。誰かが借りたまま返していないのか、それとも書庫に仕舞われてしまったのか、当時の私にはわからず、皮肉なことにその本の存在をいつの間にか忘れてしまっていた。


  一つ目の再会は中学校だった。中学校の図書室になんと『月は迷宮の鏡』が置いてあったのだ。残念ながら1巻である、『タロットカードは死の歌をうたう』は置かれておらず、読むことは叶わなかったが、それでも2巻を喜んで手に取り読んだのだった。


  最初に読んだ時の感想はいまいち覚えていない。だが、『水色』という強烈な印象が残っていた。後から読んで思い出したのだが恐らく、『夏』という季節と作中の『ラムネ』に影響を受けてのことであろう。結末も一度読んだきりだったのでよく覚えておらず、今まで読んだことのない結末だ、ということは記憶していた。



  二つ目の再会は、昨年頃であっただろうか。ふと、かつて読んだこの本を再び読みたくなったのだ。だが、なかなかタイトルを思い出せず探すのに時間がかかってしまった。
  そしてこの本を見つけたのは文庫版が発売される数日前のことであった。


  さて、前置きが長くなってしまったが、私がこの本を読んでまず、甘酸っぱい物語である、ということを感じた。不思議な力を持ち、あやかしと対峙する主人公・さやかと、復学したばかりの少年・涼くんとの、何とも表現し難い感情諸々が、こちらも何とも言えないような、そして懐かしくさえ思えてしまう気分になるのだ。その感情は、決して不快などではない。寧ろ、そのような気持ちは久々で楽しかったと言える。


  作者そのもののファンである方にはわかるであろうが、大体作品に出てくる街の名前は『風早』という街である。その数ある風早の街の中でも、私はこの作品の『風早』の街が一番好きである。
はっきりと、これだ、という理由があるのではないが、どことなく長崎の街に似ているような気がするのだ。南蛮文化が好きである私にとっては、それもこの本に心惹かれる要因の一つであった。


  また、この作品には『コンビニたそがれ堂』に登場する香水が登場するのである。恐らくこれも作者の遊び心あっての事と私は思う。
  村山早紀の作品はこういう遊び心溢れるが故に、多くの作品を読むことが楽しいのだ。