日本政府観光局が14日発表3月の訪日外国人数が、震災で観光地や交通機関が大きな被害を受けたのに加え、東京電力の福島第一原子力発電所の事故で一部の国が日本への渡航自粛を呼びかけたため、前年同月比50.3%減の35万2800人と大幅に落ち込んだ。
震災前の11日までは1日平均1万9600人(前年同期比4%増)だったが、震災後の12日~31日は1日平均6900人(同73%減)と3分の1程度に激減。国別では、韓国が47.4%減、中国が49.3%減、米国が45.6%減などと軒並み落ち込んだ。
前年実績を割り込むのは09年10月以来1年5カ月ぶり。単月の減少率としては、大阪万博後の反動が出た1971年8月(41.8%減)を抜き、過去最大。
頼みの国際会議も中止が相次いでいる。
パシフィコ横浜で今月開催予定だった「世界疼痛学会」が、イタリアに会場が変更。9月に開催予定の「アジア太平洋不整脈学会」でも開催を見直す動きがあるという。
大手旅行会社5社の4、5月の国内旅行予約は、前年同期比20~45%減少。ホテルや旅館の宿泊予約も震災発生後、東北・関東(岩手、千葉各県を除く)地方で約39万人、その他の地域で約17万人のキャンセルが発生し、「(観光業に)極めて甚大な影響が出ている」(溝畑宏観光庁長官)という。
オイラが携わるエンタメ業界では原発事故の影響で、多くの海外アーティストが帰国し、あるいは来日をとりやめた。良し悪しは別にして、日本の音楽市場の多くが外国人アーティスト頼みで動いてきたかを露呈した。
「何よりも多くの人々と美しさを分かち合う手段として始めた音楽祭です。そして、このような困難で悲しみに打ちひしがれた時にこそ、音楽は魂を救済する使命があると私は信じています」
アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンがメッセージを送り、今月1日に、協議の結果予定通りの開催を決めた「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン『熱狂の日』音楽祭2011」
。
しかし、会場となる東京国際フォーラムで、度重なる余震の影響で電気系統に不具合が判明。さらに、原発事故における国際原子力事象評価尺度がレベル7に引き上げられて以降、ヴュルテンベルク管弦楽団(ドイツ)など出演アーティストたちの来日キャンセルが重なり、予定通りのプログラムを実施することが困難となり、全有料公演チケットの払い戻しが決定した。
出演アーティストたちの来日キャンセルは東京以外に、金沢、新潟、びわ湖、そして今年は鳥栖を加えた他会場でも開催予定だった「ラ・フォル・ジュルネ」にも影響が及んでいる。
そんな中で、「音楽を届けることで少しでも力になりたい」と、周囲の制止の声を振り切って来日し、大震災で被災した人を思い、日本語で唱歌「故郷」を熱唱した三大テノールのプラシド・ドミンゴはエラい!
海外から借りる作品を目玉に据えた国際的な美術展も相次いで開催中止に。
横浜美術館で今月から6月まで開催予定だった「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」
が、プーシキン美術館とロシア連邦文化省から、原発事故を理由に日本への作品の貸し出しを断られ、中止。同様の理由で、三井記念美術館の「北斎展」、山梨県立美術館の「モーリス・ドニ展」、広島県立美術館の「印象派の誕生」展も中止となった。
一方、震災直後から休止が続いていた東京ディズニーランドが15日から営業を再開。
旅行会社各社ではゴールデンウィーク期間にも対応した特別プランを設定するなど、需要の取り込みをはかる動きがはやくも活発化し、日本旅行業協会も「大型連休前の再開はありがたい。人の動きも生まれ、消費マインドも徐々に戻る」と期待するが、震災の影響は大きく、開園時間は午前8時から午後6時までに短縮。再開後も施設の一部外壁が破損した「ビッグサンダー・マウンテン」など計3施設や人気のエレクトリカルパレードは当面中止で、東京ディズニーシーは休園が続く。
3月27日付のアメリカのニューヨーク・タイムズ紙で、“Jishuku”という名の強迫観念、過剰反応が蔓延していると紹介された。
今回の東日本大震災の大きな特徴は、地震と津波に加え、これが誘発した原発事故による三次被害があるということ。そんな中で、被災地のこと、原発のこと、停電のこと、全てが気がかりでないと言えばウソになる。
被災者を静かに悼む気持ちは必要。だが、今後も“Jishuku”という名の強迫観念、過剰反応が多くの日本人に支配し続ければ、経済停滞、失業者の増加、税収の落ち込みを呼び込む要因となり、なんら被災地の復旧・復興のためにならない。
そもそも日本人が自国の観光を自粛しておいて、訪日外国人の激減を憂うこと自体がおかしい。
いま大切なのは、それぞれの現場にいる人間が自分たちの仕事をしっかり続け、そしてひとりひとりが思う「応援」をそれぞれが実行すればいいのだと思う。