毎日名盤第156回 クナッパーツブッシュのシューマン:交響曲第4番を聴く | Eugenの鑑賞日記

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 シューマン:交響曲第4番 推薦盤 クナッパーツブッシュ指揮 ミュンヘン・フィル キング 1962年ライヴ

 クナッパーツブッシュの「秘蔵音源」がキングレコードからリリースされ、僕は飛びつくように購入、いずれもライヴ音源のブルックナー、リヒャルト・シュトラウス、ベートーヴェンなどの濃厚な名演を堪能した。音質はいまいちであるが、スタジオ録音とは異なり、非常に汗っかきのクナの即興性と持ち前のスケールの大きな音楽づくりを堪能できる名演ぞろいである。今日は、そんな6枚組のアルバムの中から、ミュンヘン・フィルとのシューマンの4番をご紹介したい。

 この曲は、言わずと知れたフルトヴェングラーのグラモフォン盤が長く愛好家の支持を集めている(以前ご紹介したのは、auditeから出ているライヴ盤である)が、クナに振らせるとまた一味違うシューマンが聴ける。テンポは非常に遅く、人によってはあまりに重苦しいと顔をしかめるかもしれないが、このクライマックスでの怪物の咆哮のごとき迫力(特に第1楽章中盤、第3楽章主部、そしてフィナーレへの移行部、フィナーレのコーダ)は、現今のスマートな演奏からは聴けない。もちろん緩徐部分における哀愁もクナならでは、男のロマンを感じる。第1楽章序奏、第2楽章の孤独感など、荒唐無稽な演奏を繰り広げることもあったクナが瞑想してひたすら己と向き合っているよう。オケの分厚い響きもクナ流だ。ミュンヘン・フィルは、クナが晩年に多く振ったオケで、ドイツのオケの中ではローカル色の強いオケだが、とにかく味が濃い。晩年のクナの代表盤として、大いに推薦したい演奏である。

 演奏 ★★★★★

 録音 ★★☆

 総合 ★★★★★