関西で活動する音楽グループConceptusです。
ボエームが佳境だからって、それだけに関わってもいられません。
またご案内しますが、クリスマスイブにはコンサートもしますし、
来年3月5日のアーノンクール1周年コンサートの準備も真っ最中。
そのコンサートの冒頭で演奏するのが、
グレゴリオ・アッレーグリのミゼレーレ。
曲(の名前)もそれなりに有名ですが、
最も有名なのは、一度聴いただけで覚えて楽譜に書いた、
モーツァルトの恐るべき偉業でしょう。
ダビデ王の悔悟の詩と言われていますが、
要するに、人間の原罪を歌ったものと考えて差し支えありますまい。
確かにアダムとイブが禁断の実を食べてエデンを追放になったのも
原罪なのかもしれませんけど、人間には根本的な原罪があります。
それは、他の生命を犠牲にしなくては生命を継続できないこと 。
そして、それは人間だけではなく、動物の原罪でもあるでしょう。
草食動物だって、草木を食べるのですから、
やはり生命の犠牲の上に成り立っているのです。
こうした原罪の上にあっては、
理屈抜きで人間の弱さを憐れんで下さいと祈るしかないでしょう。
その内容は、そしてモーツァルトの逸話は、
アーノンクール追悼コンサートのモツレクの前に置く、
いわば導入のための曲として相応しいと考えました。
さて、この私がそこいらに転がっている普及版を演奏するかといえば、
そういうことはまずないのが我々コンツェプトゥスの特徴です。
ウィグフィールドの最新校訂版を用いますが、
ここには選択肢が2つあります。
通常、ウィグフィールド版を使うといえばこれを指しますが、
ミゼレーレ変遷の歴史をダイジェストしたともいえる、
18世紀以降のミゼレーレの変化をたどり、
最終的にはメンデルスゾーンの書き間違いに端を発する、
ハイCまで登場する普及版までを見せてくれるバージョン。
そして、これは無料公開していますが、
アッレーグリが書いたまま、現代式の表記に書き改めただけの、
いわば最古の形、これを演奏するかです。
この2つは、きっちり選択する必要があります。
この曲には5声の部分と4声の部分がありますが、
5声の部分のパート配分に関わってきますので、
両方やるというのはあまり現実的ではありません。
変遷史版はSSATBという配分ですが、
最古の形はSATTBという形。
必要人員が違うのです。
1638年頃、つまり17世紀中期初めの作曲と言われていますが、
その70年ほど後、トンマーゾ・バーイという人の書いたミゼレーレも、
バチカンのシスティナ礼拝堂では演奏されるようになりました。
で、モーツァルトが聞き書きしたのはどういうものだったかというと、
この2人の作品がミックスになっていたようです。
実際、現在のミゼレーレを知った上で、
バーイのミゼレーレを聴いてみると、
そこかしこに、記憶にある要素が出てくるのです。
さて、コンツェプトゥスが扱うに相応しいのはどれかというと、
アッレーグリが書いたままのバージョンです。
これに、ごく控えめに装飾を施し、
もし初めからイタリア各地に流出していたら、
イタリアのあるところではどんな演奏になっていたか、
その可能性を提供する形になります。
なかなか落ち着いた響きでいいと思いますよ。
今、ソプラノで歌われているメロディラインは、
第1テノールが担当することになります。
つまり、パートの役割が、聴き慣れたものとはだいぶ違うのです。
こうした源流にまで遡って、
独自のアプローチで演奏を試みることこそ、
アーノンクールの遺徳を偲ぶ行為に相応しいと信じて、
精一杯取り組みたいと考えています。