宮島達男「Numerical Beads Painting」
SCAI THE BATHHOUSE
2023年4月8日(土)

銭湯を改装したギャラリー SCAI THE BATHHOUSE に宮島達男の個展を観に行ってきました。


宮島達男といえば、LEDデジタルカウンターを用いたインスタレーション作品が有名です。数字という人類であれば誰でも通用するアート言語を発見、発明したことが画期的でした。

2. Horizon in Green


3. Vertical in Green


この言語は想像以上に多様なテーマを表現することができるので一生これだけで創作できそうですが、今回新たなメディアとして、ビーズを用いた新作を展示しています。



LEDと違い静的な媒体なので、表現も難しくなるのではと思っていましたが、そこはさすが巨匠。新しい可能性を感じさせる作品となっています。

ビーズは、1から9まで数字が入れてあります。例によって0は含まれていません。

そのビーズをカンヴァスにたくさん貼り付けた作品です。

4. Numerical Beads Painting-008



カンヴァスは、碁盤の目のようにグリッドが引いてあります。そこに配置するビーズの位置はコンピュータを使い決定します。占有率をあらかじめ決めてランダムに算出、人の意思は介在しません。決定した配置にもとづいてビーズを貼り付けて完成です。

LEDデジタルカウンターでなくとも、数字のメタファーは失われません。0のビーズが存在しないところも効いています。0は無いが、空欄のマスがある。存在しない、無の空間が、存在しています。そして無の空間は全てのマス、ビーズを覆いつくし、カンヴァス全体が無で覆われて、その中で数字たちが健気に存在している。数字を人間の存在に置き換えてみると、地球の縮図とも見えてきます。



7. Numerical Beads Painting-004


真っ白だった背景にビーズの隙間を縫ってアメーバのように色が塗られています。コンピュータの指示通りだったカンヴァス上に人の手作業が加わっています。



それこそ、地球に海と陸が生まれ、動物と植物が誕生するように、無機的な画面が有機的なものに変貌を遂げています。



さらにカンヴァスに貼り付けられているはずのビーズが床に飛び散っています。脱落したのか自ら飛び出したのかどちらでしょうか。


コンピュータによって定められた世界から、はみ出した(解放された)ビーズは、自由を得たのか、奈落に落ちたのか。


或いは、私たちの存在する世界とは別の世界に存在する何なのか。流行りのメタバースの世界観を作品に取り込んだのかもしれません。


シンプルな要素から、深く、広い、イマジネーションを観るものに引き出させる宮島達夫らしい新作です。



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