マリー・ローランサンとモード
Bunkamura
2023年3月19日(日)
マリー・ローランサンの展覧会ではありますが、ココ・シャネルと2人の展覧会でした。初めの展示スペースに2人の肖像画があります。
わたしの肖像
写真の色がくすみがちなのが残念です。本物はもう少し華やかでした。
マドモアゼル・シャネルの肖像
独自の女性の美しさを創り出したローランサンと、ファッションを通して女性の解放を後押ししたシャネル。同じ1883年に生まれながら対照的な2人を通して、1910年代から1930年代までのモードを浮き彫りにする内容です。
マリー・ローランサンというとパステルカラーのイラストみたいにファンシーな女性像。初めて見た時これをアートと呼んでよいのだろうかと思ったものです。
しかし久しぶりに見た印象は意外に黒いなというものでした。そういう作品がたまたま多かったのか、それとも私の記憶の中で勝手にファンシー度が高まってしまったのか定かではありません。
今度マリー・ローランサン美術館に行ってチェックしようと思い調べてみたら、なんと閉館していました。残念です。世界最大のローランサンコレクションと言われていますからコロナが落ち着き景気が上向いたら復活してほしいものです。
実際、ローランサンはピカソやブラックと共にキュビズムの表現を探った作品がありました。
2-9 優雅な舞踏会あるいは田舎での舞踏
2-10 サーカスにて
2-11 舞踏
撮影NGでしたので画像は出せませんが、これらの作品はピカソの「アヴィニヨンの娘たち」を彷彿とさせる人物の描き方です。
それから、次の肖像画にはキュビズムのニュアンスが残っています。
3-23 日よけ帽をかぶって立つ女
帽子の形など依頼主が満足したかは微妙ですが。
先に挙げたシャネルの肖像画も、シャネルが気にいらず直してもらいないかと頼むと「あの娘はいい子だけど、どうして私が合わせなければならないの?」と手直しを拒否、結果受け取り拒否となったいわく付きの作品です。
1925年にパリで開催した現代産業装飾芸術国際博覧会「アール・デコ展」のパヴィリオンのためにローランサンが描いた絵画も展示されていました。室内装飾に調和するというテーマの作品でこれもファンシー系ではありませんでした。
こうして見てみると、こだわりを持った硬派なアーティストだったようです。人を外見で判断するのは良くないと言いますが、ローランサンの自画像を見ると自己主張は強そうな感じです。
3-28 羽根飾りの帽子の女、あるいはティリア、あるいはタニア
この作品はローランサンらしいですが、色彩は渋めです。この頃は女性が身軽なファッションに身を包み活発に行動するようになりました。帽子が大流行したので帽子を被った肖像画が多いです。シャネルも帽子をヒットさせて、メジャーなデザイナーになって行きます。
モードがテーマの展覧会ですので、シャネルの前に活躍したデザイナー、ポール・ポワレのファッションを描いたポショワール版画も展示されていました。アール・デコの時代にヨーロッパで使われたカラフルな版画で、現代でも人気が出そうなオシャレなものでした。
3-22 ガブリエル・シャネル 帽子 1910年代 シルクベルベット
黒く飾りのない平べったい小ぶりでシンプルなデザイン。
3-32 ガブリエル・シャネル デイ・ドレス 1927年頃 シルククレープ
3-R6 ガブリエル・シャネル イブニング・ドレス 1920-21年 ベルベット
ウエストの締まっていないストンとしたシルエット(こんな表現ですみません。ファッションには疎いもので。)、私でもシャネルだとわかるデザインのドレスが展示されていました。
そして時代の移り変わりと共にアートもファッションも変わっていきます。
モードの変遷としては、次にフェミニンへの回帰という流れになり、マドレーヌ・ヴィオネのイブニング・ドレスが展示されていました。ウエストが締まり、スカートはフワッと膨らんだ可愛らしい感じのものです。
ローランサンの画風も変化してていきます。
3-48 シャルリー・デルマス夫人
背景に遠景を入れ空間性を加えて作風を変えていこうという意志を感じますが、その分普通になり、魅力が薄れたなと思います。
ファッションの世界ではモードという言葉を使いますが、アートの世界では使いません。モード、一過性のものはアートではないのですが、このように同時代に活躍した人々の作品を並べて見るとコアとなる創造性に違いはないなと考えたりもします。
私はファッションには興味のない人間なのですが、視野の狭さは時に理解力を損なうなと感じた展覧会でした。
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