「部屋のみる夢 ーボナールからティルマンス、現代の作家まで」展
ポーラ美術館
2023年2月11日(土)
元旦のブログで宣言した「今年はポーラ美術館に行きます」を実現するため、2月11日(土)の休日に行く計画をして展覧会と小田急線ロマンスカーのチケットをネット購入しました。
準備万端、と思いきや関東地方にまさかの大雪。休館のないポーラ美術館が前日に休館と、「どうする家康」状態でしたが日が変われば清々しい晴天。雪景色の美術館に無事訪れることができました。
とは言え、企画展のタイトルが「部屋の見る夢」。なんか地味そうで、実は全く期待していませんでした。しかし観てみると良かったです。
ポーラ美術館様、申し訳ございませんでした。
ここにお詫びします。
ここ数年、多くの美術館がコロナ禍をテーマにした企画展を開いています。「部屋の見る夢」というのも自由に外出することを制限され、部屋にこもる日常の中でどのように自らの生活を豊かにしていくのかという人々共通の課題に向きあう作品を集めたものです。
それを国内の美術館とポーラ美術館の収蔵品、日本人アーティストで、魅力的でキャッチーな展覧会にしているキュレーターの企画力は凄いと思います。
それでは初めから見ていきましょう。
ヴィルヘルム・ハマスホイ
初めのアーティストは近年、日本でも名前が知られるようになったデンマークの画家ハマスホイ。
5 ピアノを弾く妻イーダのいる室内
フェルメールの空き家モノトーン版とでも、言いましょうか。自然光を大切にしている、部屋にはものがない、彩度の低い色使い、静かで一見、空っぽのようで、どこかに人の気配のある。ミニマルな室内を描く純度の高い室内画で、心が落ち着きます。
高田安規子・政子
高田安規子・政子は双子の姉妹。
42 Inside-out/Outside-in
壁に1/12スケールの小さな窓をたくさんはめ込んだ作品です。窓は四角いものばかりではなく丸窓、八角形の窓もあれば、開戸、引き戸、飾り窓、飾りガラス、バリエーションが多彩でおもちゃ箱のようです。
窓の上の方にランプが見えます。人の温もりを感じてほっこりしますが、その向こうに外の景色が見え、向こうが部屋なのか手前が部屋なのかわからなくなる仕掛けがあり、見ていて飽きない作品です。
この他にドアと鍵をモチーフにした作品がありました。
アンリ・マティス
マティスは生涯大胆に作風を変化させていますが、一時期室内の女性像をたくさん描いています。
26 リュート
これぞマティスという絵です。赤は赤、緑は緑、藤色は藤色、紺は紺。でも模様やパターンではなく絵画的。明るくハッキリしたベタ塗りの部屋の様子は楽しげです。小品ですが小ささを感じさせません。
ベルト・モリゾ
女性の印象派画家として、今日では評価の定まったベルト・モリゾ。まだ男女の立場がはっきり違っていた時代、子どもの面倒もみなくてはならず、自由に外出して外の景色を描くというのが難しい。そのような状況では、外光を求めてベランダや窓辺で子どもをモデルに絵を描くのは必然だったかもしれません。
3 ベランダにて
宗教画や肖像画と違い、ありのままの子どもの姿を絵にする目線。母親ならではというだけでなく、マネの弟子らしい人物画です。
エドゥアール・ヴュイヤール
象徴派の画家であるヴュイヤールは舞台美術も制作しており、室内を単なる背景としてではなく人の心情を映すものと捉えていたそうです。
20 書斎にて
何気ない日常の風景とも見えますが、奥にもうひとつの部屋がある舞台設定。書斎のひとつの椅子に座り向かいあって話しをしている親子と部屋の入り口でドアを背に2人を覗いている女性、距離感と何かの思惑を感じさせる戯曲の一場面のような絵です。
ピエール・ボナール
ナビ派の配色、ボヤっとしている感じが私は苦手なのですが、ポーラ美術館所蔵の4点の大作が配置されたこのボナールの展示室は良かったです。
11 地中海の庭
4点の中の1点。
部屋じゃなくて庭の絵でした。それはさておき、ポーラ美術館っぽい感じがしました。幸福感、品の良さ、センスの良さ、美術館の目指す方向性を感じました。
佐藤翠+守山友一朗
日本人画家2人のコラボ展示室。壁にかけられたそれぞれの油絵、中央に並べて配置した屏風、2人の大型の共作の絵画と、展示室全体として世界観を作るというキュレーターの明確な意思を感じます。
47 Rose Garden Closet 佐藤翠
51 Cosmos 守山友一朗
52 Rose Room 佐藤翠+守山友一朗
佐藤翠は花やカーテンを、守山友一朗は絨毯や衣服の細かい模様を描いた作品を展示していました。華やかなものを絵に描くことで、さらに華やかな雰囲気が引き立っていました。
ヴォルフガング・ティルマンス
絵画だけでなく写真も展示していました。違和感がなく、流れの作り方が上手です。
ヴォルフガング・ティルマンスはドイツの写真家です。都会のオフィスの窓辺やビルの一室を撮影した作品を展示していました。四角く切り抜かれた青空。夕日でオレンジ色に染まった空っぽの部屋。窓際のデスクに置かれた小物。天候や時間により現れる変わる景色。当たり前の風景を独特な目線で捉えています。
33 静物、ボーン・エステート
この作品は、インクジェットのプリンターで大型出力したものを、なんとクリップと虫ピンで壁に留めています。保存する時は丸めて筒状にしているんでしょうか。
草間彌生
30 ベッド、水玉脅迫
最後は草間彌生。ベッドの作品を展示室の中央に据えて部屋に見立てています。周りの壁にかけられた作品、カボチャ、ティーカップ、鏡も室内のアイテムに見えてくる。どれも典型的な草間彌生スタイルでありながら企画展のテーマにも沿っています。本来は独特な精神世界を赤裸々に作品化したものですが、水玉の色彩に囲まれていると元気になります。
それにしてもとても立派な美術館でした。単なる印象派などコレクションの美術館では終わらない、キュレーターによるマリアージュとでも言うべき企画展に気概のようなものを感じました。今後の展覧会も要チェックです。次回は温泉なども組み合わせてゆっくり訪れたいものです。
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