江戸絵画の華 〈第1部〉若冲と江戸絵画 

出光美術館

2023年1月9日(月)




出光美術館は2019年にアメリカの日本美術コレクター、エツコ&ジョー・プライス夫妻(プライス財団)のコレクションの190点を購入しました。

あの伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」も含む円山応挙、酒井抱一、などの日本画のコレクションです。


本来なら2020年にお披露目の展覧会を開催する予定でしたがコロナで中止となり、3年弱の時を経てついに開催の運びとなりました。

 

展覧会は会期を二つに分けて展示品は総入れ替え、若冲を中心とした1部、応挙を中心とした2部

 

〈第部〉若冲と江戸絵画 

〈第部〉京都画壇と江戸琳派

 

となっています。

 

そして今回の第1部、観た感想を先に言えば

 

ハズレなし。行くべき展覧会です。

 

十分にスペースをとったとても見やすい展示となっています。


さて、一番伝えたいことは書きましたので、ここからは気にいった作品を列記します。いわゆる自分のための備忘録です。

 

 

4   虎図 谷鵬

画面いっぱいに描かれた虎の水墨画。誰とも似ていない作風です。しかし細部までとても緻密に描きこんでいます。身体を覆う体毛を一本ずつ描いたふわっとした質感。クリームパンのような足。ユーモラスで憎めない姿の虎です。

 

5  鯉図 片山楊谷

二匹の鯉がS字にタテに並んだ構図。黒っぽい姿に鱗の感じ、当たり前ですが鯉がとても鯉らしい。水面と水中を感じさせる金泥の配し方。典型的ですがいい絵だと思います。

 

6 孔雀図 岡本秋暉

雄と雌、二羽の孔雀の絵です。岡本秋暉は孔雀が得意だそうで、お手本のような孔雀図です。頭部から体にかけて金、緑、青が配した鮮やかな羽毛。そして画面を多いつくす羽。こちらも金、緑、青を配した目玉の様な模様とその周りの毛一本一本をおろそかにせず描き切ってあり、ほれぼれするいい仕事です。

 

7  旭日白鶴図 岸岱

真っ赤な円い太陽をバックに空を飛ぶ白い鶴。頭部のディテールがリアルでここだけの3Dに見えるほど細密で立体感のある不思議な感じのする絵です。

 

8  牡丹に唐獅子図屏風 水上景邨

文殊菩薩の使いと言われる獅子が牡丹のある舞台で舞う「石橋(しゃつきょう)」という演目が歌舞伎にあり、それを題材としている絵です。唐獅子は俵屋宗達の絵を参考にし、岩や葉に琳派のたらしこみの技法を取り入れているそうです。雰囲気が華やかでお正月に合う絵です。

 

9  鳥獣花木図屏風 伊藤若冲

プライスコレクションの若冲といえば、この1点。

1センチ程度の正方形の升目で画面を分割して描くという特異な技法で描かれています。この升目描きの不思議さに加えて、動物や植物たちの雑なデフォルメがこの絵の特徴です。真正面から見た平たく円い白い象。若冲が描いたとは考えられないくらい下手な鶏。私はこの絵はあくまで実験作であり面白さあるけれど完成度は高くないと思っています。

 

10  鶴図押絵屏風絵 伊藤若冲

若冲が過去に自ら描いた細密な12点の鶴図を水墨画で新たに描き直したものです。胴体がつるっとした円い楕円の白い球になっていたり、羽根も太い筆の線にまとめていたり、大胆なデフォルメで、新しい表現にチャレンジし続ける若冲の晩年の新境地です。

 

12  寿老・蜃気楼・梅に鳩図 伊藤若冲

全く違うモチーフの三幅の絵が奇跡的にまとまっています。

  • 蜃から浮かび上がる楼閣の風景。
  • 寿老人。
  • 素早く力強い描線の梅の枝にとまる鳩。

三幅合わせて何を言っているのかわからないけれども、余白と筆使いのリズムが一体感を産んでいます。

 

 

20  草蟲図 伝司馬江漢

鉄線の絡まる枝に一匹の黒いカミキリムシが、昆虫図鑑のようなディテールで描かれています。おそらく司馬江漢の作品ではないと考えられているそうですが、高い技術の絵であることに変わりはないです。

 

38  妓楼酒宴図 河鍋暁斎

暁斎の観察眼が際立つ作品。踊る男に、両手をあげてはしゃぐ客。その横で酔いもせずに女主人とヒソヒソと料金交渉をしながら財布に手を入れる男。周りには淡々と三味線などを奏でる女や酒を注ぐ女。それぞれ立場の違いで思惑も違う。現代の接待の場でもありそうなお酒の席を描いています。

 

39  酒呑童子図屏風 

私は屏風図は苦手なのですがこれは見やすかったです。大江山に住む鬼、酒呑童子を源頼光が退治する物語。鬼の棲家に訪れ酒を振る舞い酔わせて油断を誘い退治するという正々堂々とはしていないところが生々しくもあります。すやり霞に盛り上げた胡粉で立体的な模様をつけている贅沢な屏風絵です。

 


他にも素晴らしい日本画がありましたが、キリがないのでこの辺りで。今回は動植物の日本画を厚めに取り上げました。

 

2月21日から始まる第2部も楽しみです。

 


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