沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」
東京国立博物館 平成館
2022年5月4日(水)
これまで沖縄の文化遺産を見る機会があまりなかったので、いい意味で裏切られました。展示物が素晴らしい。
見どころは、第2会場 国宝 尚家宝物。撮影OKです。
363 模写復元 尚穆王御後絵(しょうぼくおう おごえ)
琉球王国では王が亡くなった後にその肖像画(御後絵 おごえ)を描くのが伝統で代々の王の絵が存在していましたが、沖縄戦ですべて消失しました。記録写真をもとに数点が復元されそのうちの1点、第二尚氏王朝第十四代国王小穆王(しょうぼくおう)が展示されています。
とても大きいサイズで絢爛豪華な色彩です。装飾的な絵ですが背後の布のシワなどさりげなく手がこんでいます。人物を真正面から左右対称に描く構図は中国皇帝の肖像にならっているように思えます。
82 黄色地鳳凰牡丹文様紅型縮緬 衣裳
見事です。恥ずかしながら私は紅型に雑なイメージを持っていたのですが全然違いました。こちらは、ザ・琉球とでもいえそうな配色です。この他に豪華な刺繍の衣裳なども展示していますので実物を是非ご覧ください。
75 黒漆雲龍螺鈿東道盆
74 朱漆巴紋牡丹沈金馬上盃
琉球漆器というものがあることを知りませんでした。とても精緻です。
貝摺奉行所(かいずりぶぎょうしょ)という役所が様々な職人を束ねて生産をしていたそうです。
主に5つの技法で装飾されています。
- 螺鈿(らでん)
- 沈金(ちんきん)
- 箔絵(はくえ)
- 漆絵(漆絵)・密陀絵(みつだえ)
- 堆彩漆(ついさいしつ)・堆錦(ついきん)
だいだい聞いたことがあると思いますが、最後の「堆彩漆(ついさいしつ)・堆錦(ついきん)」は、本土では馴染みがないので説明しますと、色づけしたレリーフのようなものです。漆に砥粉などを混ぜ盛り上げて形を作り彩色します。
104 色絵紅葉文風炉
風炉ですから茶道の道具です。琉球士族は、日本の茶道と中画の煎茶の嗜みがあったそうです。風炉以外にも茶器の展示はありました。貿易の中継点であり文化の中継点でもある琉球の人々は外国の文物を柔軟に取り入りていたことがよく分かります。
59 王冠(付簪)
琉球の王が実際に身につけた本物です。冊封体制下では、階級に応じて王冠の形にも細かい規則がありました。しかしこの王冠は規則に反して中国の皇帝の王冠より多くの宝石が使われているそうです。修理の過程でそのようになったらしいのですが、中国との距離感の微妙なゆるさが興味深いです。
沖縄、琉球の文化というと祭り、踊り、音楽、祈り、というイメージが先に浮かび、美術が思い浮かびませんでした。やはり沖縄戦で多くの文物を消失したからです。琉球王家は仏教に帰依し菩提寺円覚寺を創建しています。これも消失していて僅かに焼け残った菩薩像が展示されていました。
その意味では2019年の首里城の火災はとても残念なことでした。以前コラムにも書いたように、その土地のシンボルとなるものを失うのはその地に住む人にとってはもちろん、外の人にとっても大きな損失だと思います。
2020年10月31日
首里城の思い出 | アートコラム Conceptual Cafe (ameblo.jp)
幸い首里城復興の計画は着々と進行し、消失した文物の復元プロジェクトも行われて、この展覧会でも展示されています。
国家に経済力があり、文化政策があり、専門家もいて、それが機能していることは大切だなと改めて思いました。
コロナも段々と落ち着き始め、沖縄観光もいずれ行けそうです。しかしバカンスがメインになり博物館は後回しになりそうな気もします。これだけ国宝が一堂に会することもなかなかありませんので、この機会に上野に観に来ることをオススメします。
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