人のすがた、人の思い ー収蔵品にみる人々の物語ー

大倉集古館

2022年5月1日(日)



GWに入ったので人混みを避けて空いている美術館(失礼かな。)に行こうと思い、久しぶりに大倉集古館に行きました。銀座線 溜池山王駅からアメリカ大使館の前の坂を登って行きます。警官が警備をしているのは当然なのですが、昨今の世界情勢もあり気のせいか緊張感が漂っているようにも見えます。警官はやり過ごして、ホテルオークラの敷地へ。石造りの立派な建物が大倉集古館です。狙い通り空いていて、じっくり見ることが出来ました。


今回は収蔵品による企画展。解説が丁寧で読むのが大変でした。



14  酒飯論絵巻断簡

お酒を飲める人は上戸、お酒を飲めない人は下戸というのは知っていましたが、飲みながらご飯もバランスよく食べる人を中戸と呼ぶのは知りませんでした。この三派、酒派、ご飯派、バランス派があるべき食事について意見を戦わせたのが酒飯論絵巻。これがニ幅の断簡になっています。一幅は中戸(バランス派)が食事をしている絵、一幅はその料理を作っている炊事場の絵です。論争の内容と結論に興味がありますが、この絵ではどの派閥が優勢かはわかりません。


15  探幽縮図(和漢古画帖)

以前、他の展覧会で見たことがあります。江戸幕府の御用絵師である狩野探幽には鑑定の依頼も多く、その記録の画帳です。小さい画帳なのに細かい模写には驚きます。数行のメモがあり、絵の良し悪し、値段、真贋、これはどこ大名の依頼、これは出来が悪い、これは偽物、これは五両、これは二百五十両など端的過ぎて辛辣なコメントが面白いです。これは鑑定の記録であると同時に自らの創作のための資料でもあり、弟子のための見本でもあります。


28  賀茂競馬・宇治茶摘図屏風  久隅守景

私は洛中洛外図屏風とか情報量が多くて訳が分からないのですが、これは余白が大きく見やすい。誰の絵かと思えば、ゆる〜い家族の絵が国宝になっている久隅守景ではありませんか。この絵にもあれに通じるゆるさがあります。元々狩野探幽の弟子ですが、狩野派から離れ独自のスタイルの絵を描くようになります。右隻は宇治茶摘みの様子。茶畑で茶を摘み、干して臼で引く。左隻は賀茂神社の競馬の様子。柵の外側に見物人が集まっています。遠くの山のふもとでは、収穫した野菜を持ち降りてくる大原女や座って休む木樵の姿も。庶民の暮らしぶりを丁寧に描く姿勢に人に対する優しさを感じます。


21  上野観桜図・隅田川納涼図  宮川長亀

久隅守景の屏風の隣にあるのが宮川長亀。これも庶民の姿を描いたもので、見やすいです。右隻は隅田川で舟遊びする様子。画面いっぱいの川に多くの船が浮いています。屋根付きの豪華な船には綺麗な着物を着た人々。左隻は咲き誇る上野の桜を楽しむ人々。垂れ幕に屏風を立て三味線など奏で楽しむ裕福そうな一団もいれば、散歩しながらも楽しむ親子、駆け回る子ども。

コロナで観光やレジャーをできない私たちに華やかな気分を味わってもらおうという主催者の思いを感じます。


24  江戸名所図絵挿絵草稿 長谷川雪旦

こちら、江戸名所図絵の完成本が横に展示されているのですが草稿に目が行ってしまいました。草稿は横に長い巻物に、空から見下ろすような視点で、浅草寺から地続きで江戸の町を横に長く描いています。かなりリアルに自然なパースで驚きます。江戸時代後期には透視図法が知られるようになり、写生の概念もありましたから、このように描けるのでしょう。


江戸時代の絵画ばかり取り上げましたが、仏像や能面、中国やインドのものもあります。
 
何よりアートは静かに独り作品と向きあうのが基本。都民の方、喧騒を避けて都心で過ごすのも良いですよ。



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