カトリック教会では本日3月25日は「神のお告げ」(受胎告知)の日です。12月25日クリスマスがキリストの誕生日ですから、その9カ月前が御懐妊の日となるわけです。
大天使ガブリエルが処女であるマリアの前に現れ神の子イエスを授かったこと告げた日。
私はキリスト教信者ではありませんが「受胎告知」の作品を取り上げるなら、今日がふさわしいと思いました。神の子誕生を告げるこの画題はキリスト教において重要な画題ですので名作が数多い。
今日は私がこれまで見ていいと思った「受胎告知」の絵画からエル・グレコの3点を取り上げます。
エル・グレコは16〜17世紀にスペインで活躍した画家です。本名はドメニコス・テオトコプロス
。ギリシャ出身のため、イタリア語でギリシャ人を意味するエル・グレコと呼ばれるようになりました。
ひょろっとした細長いフォルムの人体、荒いタッチで、陰影が強く、色の使い方にメリハリがある。個性的な画家です。
それでは、まずは1点目、展覧会で見た作品から紹介しましょう。
・東京都美術館 エル・グレコ展
「無原罪のお宿り」1607-1613年制作 サン・ニコラス教区聖堂所蔵 サンタ・クルス美術館寄託 347×174cm
2013年に開催された回顧展の目玉。この1点を見れただけで入場料は十分元が取れたと思います。
どのような絵かはチケットをご覧下さい。
実物は大きいです。
天から舞い降りるような、さもなくば、
天に昇るような感覚を覚える縦長な構図。
青と赤の衣を纏い天を見上げる画面中央のマリアの存在感。それを取り囲む天使たち。浮遊感があっていつまでも見ていられる聖なる世界。
聖書を全く信じていない私でも敬虔な気持ちを抱く絵画です。
次は国内の美術館が所蔵する1点。
・大原美術館
「受胎告知」1590年頃〜1603年制作 109.1×80.2cm
小さいけれども名品。右上に天から舞い降りた黄色の衣を纏った大天使ガブリエル、左下に赤と青の衣を纏ったマリア。二人の間の鳩が祝福を告げるかのように輝いています。マリアのお告げを聞く真摯な眼差しが印象的。背景は暗く、登場人物(天使、鳩含む)が浮かび上がって見える。1点目の「無原罪の御宿り」と違い、プライベートな空間での出来事という感じが
大原美術館の雰囲気にとても合っていると思います。
作品は公式からご覧下さい。
最後は本物ではなく複製画です。
・大塚国際美術館
エル・グレコの祭壇衝立復元
徳島県鳴門市にある陶板名画美術館。この美術館の環境展示は見事なものですが、このグレコの作品は特別です。単なる原寸サイズの複製に留まらず、現在しない幻の祭壇を再現したものです。
戦争で祭壇は破壊され絵だけが美術館に散逸したものを複製画を使って復元したスペインにも存在しない作品です。圧倒されます。
受胎告知は真ん中の絵です。
この大天使ガブリエルは緑色の衣をつけて、宙には浮いてはおらずやや地味な感じで、一方でマリアは立って動きがあり、祭壇の中央に位置しているので、全体としてもマリアが中心の構図のような気もします。
さて、いかがでしたでしょうか。
1点目の絵画は、もう国内では見ることはできませんが、他の2点は常設展示されていますので、色々落ち着いたら、ぜひ観に行って下さい。いずれも心が洗われる作品です。
来年もこの日に「受胎告知」を取り上げるつもりです。お楽しみに。