自分で選んだ本の原点
といって
思い出されるのは
どんな出来事だろう?


多くの人は
幼少のみぎりに
幾度となく読んでもらった
大好きな絵本だったりするのかもしれない。


振り返ってみると
自ら選んだ本の原点といえば、
小学校の時、
図書館を使える学年になった時のこと
だと思う。


図書館という場所に、
こんなにも多くの本があるのか
ということに驚いたとともに、
その中から自分が好きな本が借りられる
ということに少し興奮を覚えた。


私の小学校の図書館では
自分が借りたい本を
本棚から抜き出したら
その本があった場所に
背表紙に自分の名前の入った
単行本と同サイズの代本板(ダイホンバン)
と呼ばれる板を差し込む、
本についている貸出カードに
クラスと名前を記入して
そのカードを貸出箱に入れて借りていく、
というルールが設定されていた。


代本板に記名されているおかげで、
「あの人はこんな本を読んでいるのか」
ということを知ることができたし、
本についている貸出カードには、
過去に借りた人の名前が記載されているので
名前の多寡や学年によって
その本の人気や難しさのバロメータになり、
自分が本を選ぶ際の目安になった。


ある時、
本棚の上の方にある本が目に入った。
ロバート・L・スティーブンソンの名作
「宝島」
とにかく本が厚く(400ページ超)
装丁がかっこいい。
(そのときはまだ、
装丁などという言葉は知らなかったが)


ただ、
当時の私には完全に手に余るし
読み切れる自信が全くもてなかったが、
借りたいという気持ちが
徐々に膨らんで行き、
意を決して本を抜き出し、
代本板を差し込んで、
その「宝島」を借りることにした。


貸出カードを見てみると、
こんな厚い本を読もうなどという人は
あまりいないのだろう、
たった一人の名前しか書いていない。


しかし、
その名前にはたしかな見覚えがあった。


それは「優秀だ」と評判の
知人のお兄さんの名前だった。


本を読み切るのに
さらなる困難を感じたのとは裏腹に
借りたいという気持ちは、
ますます大きくなり、
貸出カードに
2人目となる自分の名前を書いて
晴れて
「宝島」を借りた。


かくして、
「宝島」との格闘が始まった。


ただ、当時の私には
いささか大変すぎる暴挙だったようで、
がんばっては読み進めてみたものの
残念なことに、
読み切ったという記憶は曖昧だ。
(というか、ほぼない)


どちらからと言えば、
その一冊を読み切ってみよう
という思いよりもむしろ、
優秀だという評判の上がる人と同じ本を借りた
という事実が、
私も少しばかり優秀になれるのではないかという
単純かつ邪な思いとして、
大きなモチベーションとなったのだと思う。


この「宝島」を借りたことを契機に、
少しずつ、本に魅かれて行く。
これが、自分で選んだ本の原点である。