ちょうど1年前。
まだ叔父さんが亡くなる前。
何故か急に、昔帰省していたM村のお墓のことが気になり出した。

あの山の中のお墓、どこにあったっけ。。
何故かわからないが、急に行きたい衝動に駆られた。しばらく経っても、その思いは同じだった。


小学生時代に叔母たち親戚を父の車で迎えに行き、先祖の墓参りへ行っていた記憶が思い出された。
帰省した時代から30年は経っている。親戚は皆年をとり、そのまま30年ほどは、村にある先祖のお墓参りへは行っていなかった。

父によると、子供だった私たちきょうだいは障害者となった叔父さんの弟さんによく川に連れて行ってもらうなどし、遊んでもらっていたらしい。


私はその薄い記憶の人をつい最近まで、叔父さんだと思っていた。弟さんはすっぽり何故か記憶からなくなっていた。






当時帰省すると、コミックが綺麗に並べてあり、それは「拳児」と言う武術漫画だった。子供ながら少年漫画を帰省中わくわくしながら読み耽っていた。



このM家は、本家があり、分家もそこそこに多く、村で商売などをしている人たちは、ほぼそのM家だった。
今でも、観光パンフレットでよく見る名前だが、恐らくほとんどが遠縁の親戚なはずだ。

村は観光地であり、修験の地だ。
私は、この30年の間にも、この村に数度訪れていたが、とんと墓のことを忘れ、思い出してもさして記憶に残らず、どの関係の人達が眠っているのかも実のところ知らなかった。

30年間、ほぼ思い出したことはなかったのに、急にあのお墓が気になり始め、先祖の墓に行くことにした。


うっすら残っている記憶を辿り、父親に場所を確認してみるが、父さえ何十年と行っていない場所でこの時、かなり曖昧な状態でお墓へ向かった。
最悪、わからなければ本家に伺って確認するとしよう。

しかし向かうにしても、さすがに山奥の墓場へ一人で向かうのは気が引けた。

そこで、友人に観光地で美味しい魚と綺麗な川で涼める田舎があると話したところ、フットワークの軽い友人が行きたい!と言ってくれた。

ただし墓参り付きだ(笑)

正直、逆の立場であれば考えてしまいそうだ爆笑

友人はそういった事を一切気にしない人だった為、快く帯同してくれた爆笑


現場の近くにつくと、昔の記憶が蘇ってきた。私の中では、山の斜面のような場所に、お墓がポツポツ点在している記憶だった。

実際に着くと記憶と一致した。しばらく迷いながら山を上がっていくと墓石が見えてきた。

想像していた記憶の10倍以上の墓が並んでいて少し驚いてしまう。


近年に亡くなった人たちが増えたのだろう。墓石が新しい。

全てM家だ。

この時、時代を感じさせる古いお墓を見て過去帳に載っていた古い仏さんは、この人たちが含まれるのだろうなと思った。


父からは、その中にあの曽祖母、曽祖父の墓があると聞いていた。しかし、一体全体多すぎて誰が誰のお墓かまったくわからなかった。

昔に亡くなった人に関しては、御影石の様な墓石ではなく、大きな岩に刻印されていた。かなり大きく170cmはあろう大きな墓石もあった。しかしそれも古すぎて刻印が読めない。


私は、下手(しもて)にある本家の家へ確認をしに伺った。誰かわからない仏さんにお経を上げるのは気が進まない。

教えてもらった曽祖母、曽祖父のものと思われるお墓にお勤めをした。友人は相変わらずまったく気にするそぶりなく読経する私を眺めていたが、こういう事に一切の興味がないことが返ってありがたかった。


帰宅してから、父親に再度墓石の確認をしてみた。

何ということか、今日手を合わせたお墓は、曽祖母、曽祖父の墓ではなかった。


私は一体誰のお墓を拝んだんだろうか?!

父親の記憶と私の説明から、それは叔父さんの父親と母親の墓だと言うことが判明した。
そして、そこから程なくして叔父さんが亡くなった連絡が警察から入ったのだ。

30年ぶりに墓参りに来た後にすぐ、叔父さんが亡くなる。

そして納骨に、再びこのお墓に来るとは、この時夢にも思っていなかった。