ここまで霊障が出てくるとは正直予想外だった。
かれこれもう10年以上はここまでの事は起きていなかった。
そういった事に影響を受けていた遥か昔や、寺で行をしていた時期にはあったが、朝一番で起き上がれないほど、強烈なものは初めてだった。
過去の時代を経て、自分の心や生き方を整え、信仰するなどをしてからはこういった事もほとんどなくなっていた。
だから、目に見えないものの影響だと繋げなかった。
続く不調は、季節の変わり目の影響だと思っていた。しかしやがて異常なだるさと重たさ、頭痛、そして元々この時期によく患っていた副鼻腔炎と思われる症状がみるみる悪化していった。
霊障は、元々弱かった部分や持病がある部分などが更に酷くなる場合が多い。
やがて声がかすれはじめ、咳き込みが続き、ついに声が完全に出なくなってしまった。
冒頭にも書いたが、霊障は身体が異常に冷える。
この時、45℃のお風呂に毎日入っていたにも関わらず寒気は一向に止まらず、完全に病気ではないと悟った。
私は普段、霊が見えたり聞こえたりはないものの、近くに来ると体で肌で敏感に感じる。
周りにまとう空気が変わり、上半身が重しの様な(鉛のヘルメットをかぶっている様)な重圧感と圧迫感が一気にかかってくる。
まるで、ジェットコースターに乗っている時にかかるGの様な圧の強さだ。そして視力がとんでもなく下がる。
ある日は、先祖と思われる無数の仏さんが自分の周りに来ている事がわかった。
その日は奇しくも、奈良で開催されていた「空海展」へ無理矢理滑り込みで向かった日だった。
体調が悪い中、開催日も終わろうとしていた為、どうしても見たかった。
何とか現地に着いたものの、案の定とても見れる状態ではなく、また予想以上の人の多さもあり、途中でへたり込んで歩けなくなってしまった。
結局まともに見る事が出来ず、何のために入場料を払ったのかと悲しくなった。
この時、かなりの数の仏さまが、ズッシリと体に覆い被さっているのがわかった。さらにその影響で、自分の目が吊り上がっているのもわかった。
「....これはあかんな」
ただの霊障ならじぃちゃん先生に頼めば、気功を受ければ外れる。
自分でも近くの寺に行き、お経や真言をあげれば大体スッキリして帰って来れる。
しかし、こればかりはどうしようもない。
浮遊霊などではないのだ。
やがて、朝も起きれなくなり、声が出なくなってから、供養のための勤行ができなくなった。
完全に声が出なくなる前、お経を上げてみたが、口を動かし声を発するという動作にGがかかる。
体と同様に口がとても重たい。言葉を発することが重くて声にならないのだ。
また口をパクパクし酸素が薄い中お経をあげている様でもあった。
やがて、私や父親の状態と同じ事が弟に起こっていたことを知る。
不思議な事に、姪達やお嫁さんには、その影響は一切いってはいなかった。
血が濃いこの親子だけの様だった。
私はご住職に連絡をした。奥様が出られて出張中という事だったが、事情を話すとすぐに日を作ってくれた。
後日、伺い一連の話をご住職に伝える。
「まぁ、そやね家族さんに影響出とるね」
やはりそうだった。
心身ともに屈強で、影響がなさそうな弟までか、、家族がこれだけ被ってしまう状態とは、一体どれだけのご先祖さんが供養されていなかったのだろうか。
まがりなりにも、数年はやってきていたのに。
私は、ご住職にこのまま私まで動けなくなると、完全に家が機能しなくなってしまい、本当に困ると相談をした。
すると、
「ちょっとそこに手を合して、頭を下げて座りなさい」
ご住職は、数珠を持ち合掌しながら、お経を上げ始めた。
お加持でもして頂けるのか?
少しほっとした。
良かった....。
ところが、2回ほど唱えられ、すぐにお経が止まる。
「あんた、拝んでへんやろ!」
私は、その言葉に目を見開いて驚いてしまう。
声が出なくなってから、お経をしばらく上げていなかったから。
続