ダンっ!
真選組の道場から、床に叩きつけるような音がする。
「なんの音っすか?先輩。
今日は稽古はなかったはずじゃ?」
「今日は確か、女中の採用試験じゃなかったか?
柔道だか空手だかやってんだろ。」
「女中の採用に武道、ッスか?」
「ここはむさ苦しい男ばかりの職場だし、女に飢えてる男の溜まり場だ。
隊士が女中に手出しできねーよーに強い女ばかり揃えてんだよ。
覗いてみるか?」
~道場~
ダァン!
「一本!」
たくさんの隊士が見守る中で、女中採用試験は行われていた。
悪条件にもかかわらず、採用試験には十数人もの女性が並んでいた。
選ばれるのは1人、だが、まだ合格者は出ないらしい。
「誰ですか、あの若い隊士?
めちゃめちゃ強いっすね……」
「そうか、お前はまだ新人だから知らねーのか……
あの人は篠原夏希さん、まだ若いが、一番隊副隊長だよ。
年下だからといって舐めてかかるととんでもないことになる。」
段々と人数が減り、残り3人となった。
「おい、夏希?本当にそこそこ手を抜いてんだろうな?」
「抜いてますよ、っつーか、これ以上手を抜いたら、女中として採用できませんよ……!」
こそこそと近藤さんと話していると、まだかというふうに、次の女がこちらを見た。
「ああ、悪い悪い。」
礼をすると、女は構えた。
(空手か……?)
そう思った瞬間、ドスっと鈍い音がした。
夏希の胸に勢いのある蹴りが決まった。
「一本!」
「ケホッ…………いってー………」
辛そうに立ち上がるが、その顔は笑っていた。
「近藤さん!この子で決まりっすよ!」
「おーい!?まだ2人残ってんだけど!?」
「募集人員は1人っすよね?
ほら、こっち来い。」
たった今採用が決まった奴を施す。
「で、お前、名前は?」
「あ、申し遅れました。
私は橘 美輝と申します。」
「よろしくな?オレは篠原夏希。
一応、一番隊副隊長を努めてる。
他の隊士の紹介は後であるけどな。
とりあえず今はオレが屯所内を案内する。」
「で、ここがお前の部屋だ。
ここは寮みたいなもんでな?
おまえの他に婦長を合わせた5人が寝泊まりしている。」
「あの篠原さん?お風呂場は…………」
「お、そうか、こっちだ。
風呂場掃除は隊士が代わる代わるやってる。
入る順番もあってな?
まずは局長の近藤さん、次が副長の土方さん、後は各自自由。
女中は11時以降だ。
まぁ、詳しいことは女中に聞いてくれ。」
淡々と簡潔に話す夏希の横顔を見つめる。
美輝は夏希におかしな感情を抱いた。