前回記事【番外編】にも関連しますが、この楽器においてのチューニング作業は、自分でその感覚をつかむことに大きな意味があります。
小さい頃、初めて自転車の補助輪を外して乗る練習をしたとき、ふらふらしながら何回もこけて、バランスを身に付けていったのではないでしょうか。
乗れるようになってしまえば、特に意識することなく、スッとバランスがとれています。
この楽器においてのチューニング作業も、最初のうちは少し時間がかかるものです。
しかし、その感覚をつかんで慣れてしまえば、そんなに時間のかかるものではありません。
逆に、先ず この感覚をつかまないままでは、ちょっと弾きこなすのは難しいかもしれません。
と言いますのは、この楽器のチューニングは、チューニングが合えばいいという問題ではないからです。
他の楽器は、たとえばギターならば、それぞれの弦を基準の音にチューニングします。
そして、誰かがチューニングしたものを、他の人が弾いても大丈夫です。
ですが、この楽器はそういうわけにはいきません。
まわりの環境、気温などに加え、演奏者の体格が大きく影響します。
他の人が代わってチューニング作業することができないのです。
その点は管楽器に多少似ていると思います。
そして、ここからが重要なポイントですが、
演奏者の体格とともに、楽器に対する立ち位置、姿勢、手の軌道が大きく関わってきます。
それらがいいかげんだと、毎回、同じようには鳴ってくれません。
個別の部分的なものではなく、全てひっくるめた総合的なバランスです。
そのうえで、はじめて微妙な違いを見極める感覚が養われます。
チューニングの時点で 既に演奏者の心構えが試されているのです。
演奏前に いつも、書道で硯に墨を磨るような気持ちで、こころをおちつかせ、自分と楽器との信頼関係を構築する時間が、この楽器のチューニングだと考えています。(あくまでも個人的見解です)