村上春樹氏が 『村上ラヂオ2~おおきなかぶ、むずかしいアボガド』 の中で、アンガー・マネジメントという話を書いている。
「何かでかっとしても、その場では行動に移さず、一息おいて前後の事情を見きわめ、『これなら怒ってもよかろう』と納得したところで腹を立てること」 である。

たいていの場合、頭に血が上ったとしても、後で冷静になってみればなんとつまらないことで怒っていたことかと情けなることは多々ある。(いや、あった。)
怒ったはずみで失ってはならない人と永遠に別れてしまうことだってある。(いや、あった。)
たとえ非が100%相手方にあったとしても、自分の怒りをコントロールできるならそれにこしたことはない。
一瞬の怒りで失うものの大きさを、後になって気づかされるのであるなら。

もちろん、怒りをもつなといっているわけではない。
「『これは怒って当然だ』と再確認できた少数のケースについては、冷製にいつまでも腹を立て続けること」 があってしかるべきだと思う。
要は、刹那的に燃え上がる怒りを冷静に観察する、深い山の湖のような静かな己を失わないということだ。

ふりかえると、私にとっても 「冷静にいつまでも腹を立て続ける」 例がいくつか数えられることがわかった。
それをいちいちここで書いてもしかたがない。
しかし、「冷静に」忘れないでいる「怒り」を持つことも、人生を歩ませるエネルギーだと思う。

大きな力に馴致される人間になりたくなければ、怒りは持つべきだ。
昨今は、ものわかりのよさがあちこちうようよしていて、いささか気味が悪い。
冷静で、正当で、長続きする 「怒り」 。
怒ることを忘れた時、きっとからだの一隅で何かが死ぬはずだ。


今日もウィノローグに来ていただきありがとうございました。
屋根に大きなピンクのハートマークの電飾を置いたお家を発見。
屋根の上にわざわざ備え付ける意欲と実行力には敬服します。