「あなたには無理」

まあ、よく言われる言葉である。
親から、先生から、友人から、恋人から。
この言葉、自分が一番信頼する人から言われた場合が最も傷つくそうだ。
信頼する人というのは、自分を理解してくれている人であり、自分のことをよくわかってくれている人である。
そういう人から、「そんなこと、あなたには無理」と言われれば、誰しもやる気を失うだろう。

少し前、大リーグにアボットという隻腕の投手がいた。
彼が小さいころ、両親に野球をしたいと言った時、両親は「あなたには無理」と言わなかった。
生まれつき右手の手首から先がなかった彼が野球をするなど、普通の見方からすれば不可能だろう。
しかし、両親は「あなたには無理」と言わず、「じゃあ、どうすれば野球ができるだろう」といっしょに考えた。

そして、生み出したのがアボット・スイッチという投球方法。
右手に右利き用のグラブを置き、左手で投球した後すばやくグラブを左手にはめるのだ。
これで守備ができるのかと思うが、彼の守備の技術は並みの選手以上だったという。
大リーグ通算10年で87勝108敗、防御率4.25という成績を残している。

隻腕で大リーグでも活躍できる選手になった彼を支えたのは、両親の教育だ。
障害を持った子どもの可能性を信じ、子供といっしょにその生涯を乗り越えていこうとする姿勢だ。
口で言うのは簡単だが、並大抵の精神では親もそんな言葉をかけられない。
両親の覚悟がうかがえる。

「あなたには無理」と言った時点で、きっと言われた人の心の中の小さな灯が一つ、ふっと消えるのではないだろうか。
言葉には気をつけよう。


今日もウィノローグに来ていただきありがとうございました。
先日のポッキーさんの話を、私なりにアレンジしてみました。