夕日に照らされた芸術劇場に足を運びました。
今回の目玉は、なんといっても、原発のために来日をキャンセルしたウィーン・フィルのメンバーの中で、ただ一人、遠路宮崎までやってきて演奏するウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル氏です。
曲目は
①モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
②モーツァルト:交響曲第40番
③ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
③のソリストはもちろん、キュッヒル氏とチェロがボリス・アンドリアノフ氏。
③が楽しみだな、キュッヒル氏をしっかり見届けるぞ!と気合い。(笑)
ホールに入ると、すでに①の演奏用に椅子や譜面台が配置されている。
ん?指揮台がないなぁ・・・・
と思っていると音楽祭の管弦楽団員が入場してくる。
おや、コンマスはなんとキュッヒル氏ではないか!
今日は①~③まで出ずっぱりなんだ!
チューニングが終わって、さて指揮者の徳永さんは?
と思っていたら、キュッヒル氏がコンマス席から合図をしていきなりフィガロが始まった。
うん、これはおもしろい、指揮者なしでの演奏だ。
みなコンマスのキュッヒル氏の動きに目をやりながら演奏している。
こりゃあ、指揮者がいる時より演奏家は緊張するだろうなぁ。
第1ヴァイオリンは9人いるけど、コンマス席のキュッヒル氏の所からすごくやわらかで艶のある音が聞こえてくる。
5列目の真ん中に座っているからだろうか。
やはり、ウィーンの音は違う、と感じさせられた。
続いて、②の40番。
これも指揮者なしでの演奏。
たぶん、会場のほとんどの人がコンマスばかり見ていたはず。
かなりテンポの速い40番で、短調の曲が短調らしくなく、まるで明るい弦楽合奏のように聞こえてくる。
その中で存在感をどんどん主張してくるのがキュッヒル氏のヴァイオリン。
ディナーミックの取り方、ビブラートの聞こえ方、pppとfffの表情。
日本の演奏家とは明らかに違う音色であることは確か。
彼一人の音でウィーンが体験できる、という感じがした。
終始アレグロの40番は軽やかに終わって、休憩。
携帯で時間を見たら、2曲で35分ぐらいではないか。
休憩後はボリス・アンドリアノフ氏との競演。
ブラームスの大曲を、3楽章通して暗譜で弾くキュッヒル氏。
アンドリアノフ氏との呼吸もぴったり。
いや、むしろ積極的にリードしていく。
ヴァイオリンはストラディヴァリウスなんだろうか、とにかく音色が丸く艶があって、くっきりと音が立つ。
諏訪内さんの時と同じような印象。
諏訪内さんもたしかストラディヴァリウスだったはず。
3楽章はちょと疲れたみたいだけど、フィガロからずっと出ずっぱりで弾いてもらって、ウィーンの音を本当に堪能させてもらいました。
アンコールでは、管弦楽団のコンマスとして再登場。
ブラームスのハンガリー舞曲1番を演奏。
昨年のウィーン・フィルの公演と同じ曲だったけど、その時以上によく聞こえた。
終わったあとはわれんばかりの拍手。
何度もカーテンコールで気の毒だったけど、もしかしたらキュッヒル氏を宮崎で見るのはこれが最後かもとしっかりと目に焼き付けました。
ライナー・キュッヒル氏。
さすがウィーン・フィルのコンマスを長年勤められるだけある。
おそれいりました。
そしてありがとうございました。
今日もウィノローグに来ていただきありがとうございました。
ほんま、今日はライナー・キュッヒル・コンサートでした。