5冊目 アドボカシーマーケティング | コミュニケーション修験道、ここが入口。~読書漬だよ、1週間。~

5冊目 アドボカシーマーケティング

アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業 (ウォートン経営戦略シリーズ)/グレン・アーバン

¥1,995
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企業がソーシャルメディアに関心を持つことになる背景には、
一体何が起きていたのかが詳細に書かれており、
ソーシャルメディアの役割を根っこの所から
考える機会を与えてくれる本です。
(日本では2006年11月発行)

グランズウェルという流れが押し寄せてきたのは、
1人の天才や、共有、共感を求める人間の本質だけが理由でなく、
そもそも企業が向き合っていた課題があり、
困難を乗り越える手段となりえると意識的・無意識的に認識したからこそ
多くの企業がソーシャルメディアに関心を持つことになったと推察されます。

アドボカシーとは、「顧客への支援」のこと。
つまり、タイトルとなっているアドボカシーマーケティングは、
顧客を支援することを通じて行うマーケティング戦略を意味します。

・情報へのアクセスの増加(人口、頻度、情報への信頼性の増加)
・選択肢の増加
・直接取引の単純化(オンラインだからカンタン!)
・顧客同士のコミュニケーションの増加
・顧客による防衛手段の増加(ポップアップブロッカー等)
という5つの要因によるカスタマーパワーの高まりにより、
従来の一方的な押し付け型のプッシュ・プル型の戦略は効かなくなってきている、
という問題の提示から本書は語り始めます。

押し付け型の広告なんか誰も見向きもしない、
なんてことは昨今どの広告関連の本を見ても書いてあることと思いますが、
リレーションシップ戦略も効かないのかしら?
という疑問はやはりあると思います。

これに対して、「一対一の関係の重視」という理想は正しいが、
データマイニングや強引な告知の延長線にしか利用しておらず
現実的にうまくいっていないと指摘し、
リレーションシップマーケティングの最適化に加え、
アドボカシーこそ有効で新しい戦略であるという主張をしています。

マドボカシーマーケティングを実行すると、
「顧客を理解し、そのニーズを満たす」という
徹底的な顧客支援の立場に立ち、主導権を完全に顧客に委ね、
必要であれば他社の商品をオススメしたりするほど
顧客視点に立つことになります。

信頼関係を築きましょうと本書は語りますが、
なかなかどうして、周りの企業様が納得してくれるとは思えません。

そこで、今やらないと今後広くどの会社もやるようになる上、
信頼関係をすでに作ってしまった競合企業からの乗り換えを引き起こすのは
とても大変かつコストがかかってしまうことになるので、
今やっておいた方がオトクだよ!
と背中をグイグイと押してきます。

下記が戦略のルールです。
・顧客を支援せよ
・有料製品へ重点的に投資せよ
・価値を想像せよ
・顧客と共に製品を作れ
・完全に実行せよ
・顧客にとって優良企業であれ
・顧客との長期的な信頼関係を測定せよ

しかし、全てを透明性をもって伝え、
いくら仲良くなれたとしても、
薦めてくる自社商品がどうしようも無いものだったら
ダメなことを自ら露呈し、
周知してしまうことになってしまいます。

だから、徹底したTQR(トータルクオリティマネジメント)が
前提として必要となります。

一点気になったのは、
お客様への信頼を築くために徹底した奉仕を行う
というスタンスは素晴らしいのですが、

ともすれば大会社が下請けを虐げたりしてしまったり、
流通がメーカーにさまざまな関係の無い仕事をさせていたり、
などの問題を日本の現状が抱えていることを考えると、
国内での適用は、もう一歩現実面での思考の詰めが必要かもしれません。

ただ、「流行」のソーシャルメディアを導入する
必要性を考察する上では欠かせない
重要な示唆に富む本であることは間違いありません。

事例も豊富であり、アドボカシーマーケティングって何?
ソーシャルメディアの必要性ってそもそも何なんだろう?
など疑問をお持ちの方、必読の1冊です。