00年代 個人的ベスト10アルバム 邦楽編 第4位
銀杏BOYZ - DOOR (2005)

$落書帳-DOOR

悩める10代にとっての聖典と化し絶大な人気を誇った
Going Steadyのメンバー三人による新バンド、銀杏BOYZの一作目。
この「DOOR」と同時に「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」というアルバムも出ていて
どっちも銀杏BOYZとしての新曲にGoing Steadyのカバーを何曲か混ぜた構成なんだけど
純粋に銀杏BOYZの曲だけを集めて一枚に纏めていたら、一位でも良かった。
そう考えるとちょっと惜しい。カバーも良いんだけどねー。


一度だけ観に行った彼等のワンマンライブの風景と空気を忘れることが出来ない。

演奏はむちゃくちゃのぐちゃぐちゃだし露出度は高いし赤い血が沢山流れているし
叫び続ける喉は潰れて痛々しいし、歌はもはや歌になっていないし…。
おいおいいくらパンクだなんだのって言ったって
これはちょっとやりすぎなんじゃないのか?と。
これがあのGoing Steadyを解体してまでやりたかったことなのか?と。

驚く僕を余所目に更に驚くべきは
それを見ている客がもうそれはすごい勢いでびゃーびゃー泣いていたこと。
僕の左隣の、髪の毛を三色に染めた、いかにも私生活に問題アリって感じの女の子は
可愛い顔の穴という穴から変な汁(鼻水やら涎やら)を垂らして泣き叫びながら笑っていた。
ちょっと言葉にならなかった。形はどうあれ、ここまで聞き手に求められる音楽があるものなのかと。
バンドと客が発する熱量の前に比喩ではなく目の前が霞んでクラクラしてしまった僕は
それ以来彼等のライブに足を運んでいない。あの空間は自分が居るべき場所ではない気がして。

銀杏BOYZ - 人間(part1)


銀杏BOYZ - 人間(part2)


様々な出来事によって自分の中にぶわんぶわんと生まれてくる
様々な喜び、怒り、哀しみ、苦しみ、迷い…みたいな感情達を
自分の中で抱え込んで自分の中で解決出来るほど、人間、特に10代の頭は賢く出来ていない。

自分の脳味噌が持ち合わせていない言葉と感情を与えてくれるから
悩める人間が音楽に救済されるってケースが多くて、だから音楽は重宝されているわけだけど
どれだけ綺麗なメロディーでも、歌でも、声でも、歌詞でも、駄目な瞬間ってのがある。
悪戯に絡まって解けない糸のようなモヤモヤがそれでも絡まり続けて
「まわる まわる ぐるぐるまわる」って感じで心臓を痛めつける時に
何よりも必要なのは「叫び」だ。感情を爆発させることだ。全ての感情を吐き出すことだ。
銀杏BOYZはまさにその叫びを音楽の枠組みのギリギリまで追い込んで追い込んで叫びまくる。

銀杏BOYZ - SEXTEEN



僕の赤血球と 僕のメロディと のような心を 君に突き刺すでしょう
僕の目ん玉と 僕の内臓と 僕の排泄物を 君に捧げるでしょう
愛を滴らして 愛を滴らして 裸の僕等



なんて、相変わらず汚いけど、最後に


街にはドボドボと ミカンが降ってきたし
僕らは踏み潰して 蹴りながら キスをしたし



ってわけわかんないけどとにかくドリーミングな風景が描かれていて
わけわかんないけどなんだか暖かくて、この人の心の奥の奥は本当は綺麗で綺麗で
純粋なんだろうなあ、素敵だなあ、なんて思ったり。


彼等の音楽を「聴くに耐えないゴミ、騒音」としか感じられない人、あなたは正しい。
だけどこの汚い汚いゴミ以下の叫びを必死に追い求めて必要としている人間も
また正しく、そして確かに存在するのです。

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