忌野清志郎が亡くなった。

涙が出ないのは
彼の事が嫌いだからじゃない。
なんとなくまだ信じられないからだと思う。

今年のフジにだってひょっこり出てきそうな気がしてならない。
お墓に入って運ばれてきてさ
イントロと共に棺突き破って復活して
眩しい笑顔でピースでピースを歌ってくれるんじゃないの。
そんなふざけた光景が簡単に想像できるなあ。

曲に特別な思い入れがあるわけじゃないよ。
個人的な好みとも違う。
大好きなアルバム挙げろって言われても
聴いてない曲のほうが多いから
つまらない返事しか出来ない。

でも彼のステージはとにかくピースフルで大好きだった。
ロックンロールは熟成する。
そこらへんの若いバンドじゃ絶対に表現出来ない
だからといってオッサンになれば出来るってわけでもない
彼にしか出来ないステージがいつもあった。

失恋の絶望に苛まれて笑うことを忘れた数年前の自分に
世界は楽しくて輝いて掛け替えのないものだと教えてくれたのは
間違いなく、間違いなく彼のステージだった。

ステージで歌う彼にいつだって夢中にされられた。
その瞬間はどんな最低な過去や出来事も
脳から内臓から皮膚から抽出されてごにゃごにゃになって
二酸化炭素と共に体外へ排出されていくような感覚があった。

思えば楽しい夢を見ているようだった。

うん、涙が出ないのは
なんとなく信じられないから、ってわけでもないんだなきっと。
棺突き破ってって復活だとかさ、そんな夢ばっかりは見ていられないんだ。

涙を流すより感謝しよう。
夢から覚めたって
現実を突きつけられたって
笑って強く生きていこう。
死ぬまで生きてやろう。

忌野清志郎 - デイ・ドリーム・ビリーバー