自然界のオキテと人間の発明
こんにちは。複雑系自営業者のコンプレクソロジストです。ごきげんいかが?
先日こちらの記事 でご紹介した
ゾウの時間 ネズミの時間
という生物学の本、しばらく前に読み終わりました。
この本のテーマは動物のサイズと時間の進み方を科学的に解説することですので、中には結構難しげな数式などが登場します。
しかし、私は全部スルーして(笑)それでもそれなりに内容が理解できました。
彼女も以前この本を読んでみようとしたのですが、
(‘Θ‘#) 「こんなの電車で読めない」
だそうです。
うん・・ちゃんと理解しようと思ったらノートが必要かもしれない・・
しかし、私のように数式スルー機能が搭載されている人にとっても手軽な発見がたくさんある良書だと思います。
私はもう一度読みたいと思う本は沢山ありますが、実際に二回読んだ本はもしかするとこれが初めてかもしれない・・・そのくらい気に入っている本なんです。
通読してみると、自然界の動物たちのそれぞれが長い時間をかけて研ぎ澄まされた一つの結果であることがよく分かります。
また、同時に全ての動物たちが何らかの課題を抱えていることも理解出来ます。
課題・・これは犠牲という言葉に置き換えてもいいでしょう。
なにかの能力を獲得するかわりに、なにかの利便性や安全性を犠牲にしているのだと思います。
私たちほ乳類は体のサイズを大きく進化させてきましたが、そのくせ素早く動くこともできます。
しかしそのためにものすごく大量のエネルギーを必要とするんですよね。
年がら年中、それこそうんこしながら食べるみたいなことが要請されていますし、もしそれがイヤだと言うなら目に入る「他人」をとっつかまえて食うという、ズルをするしかありません。
まぁズルといっても相応のリスクがありますが、自分の自由な時間はわりと持てるよね(`Θ´)
草食動物がコンビニのアルバイトだとしたら、肉食動物は家庭教師みたいなもんでしょうか。
我々ほ乳類は恒温動物ですが、変温動物と比較すると約30倍ものエネルギーを必要とします。
これは同じ体重のもの同士を比較していますので、例えば体重60㎏の人間は、同じく体重60㎏のワニの30倍のエネルギーを必要とする、というお話。
極めて燃費悪い。
しかし燃費のいい変温動物はこれまた相応なリスクに晒されており、体が温まるまで活発に動くことができません。
そのため朝方に敵にハケーンされたりなんかすると逃げることもかなわず、マグロ状態で食われるしかないのです。
奇しくも昨日の記事でご紹介した彼女のつぶやき・・
寒いと動きが鈍くなる・・・・
いろいろなことを想像させられる一言です。
この、ゾウの時間 ネズミの時間で取り上げられていたとても興味深いテーマをもう一つご紹介したいと思います。
なぜ車輪動物がいないのか
ああああ!!!確かに!!!!(`Θ´)
陸に住む動物はみんな複数の足を交互に出して歩くし、水の中ではみんなヒレを使うし、空中では翼を使います。
どうしてタイヤを装備している動物がいないんだろう!!!
スクリューやプロペラが自然界に存在しないのはなんでだろう!!!
「なんでないの?」っていう質問って答えにくいと思うんですが、それでも著者は苦しそうに(笑)それを説明しています。
エネルギー効率が悪いからとか、軸と車輪は切り離されてないとだめだとか、舗装された道路が大前提になるとか・・・
まぁでも結局のところ、ないもんはないんですよね。
仕方ありません。
「なんであなたはお金を持ってないの」って言われても、ないものはないんです。あるところに行ってください。
さて、動物界に車輪が存在しないということに思いをはせると、逆に
それを発明した人間ってすげぇ!
と感じ入ります。
ヒントは坂道を転がる石だったり丸太を転がしてみたことだったりするかもしれませんが、やはり先駆者たる動物は存在しません。
自然界からのヒントかもしれないけど、それを行っている動物はいなかったんです。
カンフーは動物の動きをヒントにするのが定番ですが、動物からヒントを得られないものを生み出すのって逆に難しそうではないですか。
蛇拳とか鷹拳とか虎拳とかは見なくてもどんな動きかなんとなく想像つきますが、
雪崩拳
とか
台風拳
とか
北斗七星拳
などは存在しません。
北斗七星拳はどんなのか想像つくかもしれませんが、それはズバリ漫画の影響です!
他の二つは極めて迷惑な動きをしそうです。
事実、古代には車輪を知らない文明が沢山存在しました。
つまり車輪ってのは誰もが思いつくようなことじゃないんですね。
発明した人はきっと天才だと思う。
そして私たちが何千年も前に手に入れた車輪という文明は、今でも人間生活の根幹に関わる重大な部分を担っているんです。
あらゆる移動手段は車輪なくして成り立ちませんし、車輪を広くとらえて歯車、モーターなども含めると、これがなくなったらまじでなにも出来なくなるでしょう。
車輪がついている自動車や自転車は言わずもがな、船だって飛行機だって、ホバークラフトだってプロペラかスクリューが必要です。
もしパソコンの電源を入れても、冷却ファンがないのですぐにぶっこわれます。それにそもそも電気を生み出すタービンがありませんので・・・ってこれ前に話したな・・(笑
私たちの機械文明は「回転すること」を抜きに語ることはできません。
根本的に物を上下とか左右に動かす技術はないんですよね。
上下左右運動はおおむね回転の運動を変換しているだけで、油圧サーボやエンジンのピストンなどもやはり回転するものが必要です。
たとえばアイボっていうロボット犬がありますが、あれの体には沢山の歯車が組み込まれています。
アイボは歩行しますので上下左右の運動をしますが、実はモーターで歯車を動かして結果的に横や縦の動きにしているだけでやはりその正体は回転運動と言えるでしょうし、ミシンなども上下に動いているように見えますが、正体はやはり歯車とモーターです。
つまり私たちの生活は動物界に存在しないはずの車輪によって成り立っている面が非常に大きく、そうした意味では
おれたち世界初の車輪動物!
って主張しても間違いではない気がするのです。いや、間違ってるかな(笑
ところで、今後私たちの生活にロボットがどんどん進出してくることは明かだと思います。
私はシンプルにワクワクします (`Θ´)
しかし上で申し上げたアイボもそうですが、歩かせようと思ったらどうしても「回転>その他の運動」という変換が必要になり、とにかく部品が多くなるし素早く動かそうと思ったらギアが必要になって、そんでさらに部品が沢山必要になるでしょう。
で、結果的にとっても重たくて必要以上に大きなものになってしまうのではないでしょうか。
例えばホンダが開発したアシモというロボットは確かにすげぇ!!!うん、すげぇよ!!!
だけどある日の朝あなたが職場であれを発見して、しかも上司から
「新入社員の斉藤君だ。とりあえずお茶くみやって貰うから。」
って紹介されたとしても受け容れがたいなにかがあるはずです。
アシモが足を上げるたびに実はものすごい勢いでモーターがまわっているわけで、結果的に運動の変換にエネルギーのロスが発生すると思います。
あなたが冷めたお茶を渡されて「斉藤!もっと早く動け!」と苦言を呈することは火を見るよりも明らかです。
私たちの腕や足は筋肉の収縮によって動いていますので、そうした意味で私たちとアシモとの間には埋めがたい大きな溝があるのだと思います。
運動の根本的なメカニズムが全く違うんですね。
先日、日立がわりと実用可能っぽい人工筋肉を開発しました。
(詳細はこちら )
何千年も続いている実は非効率な車輪の文明が終わりを向かえ、収縮運動の文明を築いてゆく幕開けがまさに今かもしれない・・・そんなことを考えています。
歯車を使えば前後左右に運動するものを作ることは出来ます。しかしどうしてもサイズが大きくなってしまうし、大きな力を出すと壊れますよね。
もしも収縮文明が訪れたら思いもよらない便利なものが誕生するかもしれません。
自動で歩いてくれる靴
とか
自動たかいたかい機
とか
超コンパクト!ドアノック機
など・・・(`Θ´)
あ、そうそう、大事なこと言うの忘れてました。
とりあえずもしもアシモが職場にやってきたら、運動の根本原理が違うからといって差別しないで、対等に接してあげて下さい。
私は約30年後にロボットの人権付与を提唱する予定です(`Θ´)