痴呆症 改め 認知症 | 複雑系レトリック~自営業白書~

痴呆症 改め 認知症

最近痴呆症という呼び名を改め、認知症という言葉を使うようになったニュースが流れました。

実は私の爺ちゃんも大往生する前はこの認知症になりました。
私の爺ちゃんは・・そう!あの乳児である私を階段から落としたあの放蕩ジジイです。

この認知症というのはいろんな形があり、その取り扱いも賛否両論だと思います。
私の爺ちゃんの場合は愉快な認知症でした。認知症になった人はシアワセだ、なぜならなにも分かっていない状態で夢の中だから、こんな認識を「間違いだ」と言う意見があるのも存じております。
しかし私の爺ちゃんが悲劇的な状態でなかったことはとても自信があります。
彼はあくまで夢の中でおもしろおかしく愉快に生きて、そして死にました。

私の爺ちゃんはとにかくギャンブルが大好きでした。私が生まれてすぐ

爺ちゃん 「こいつはジョッキーになってもらわにゃいかんばいねー」

ジョッキーといえば、そうです。競馬の騎手ですね。

え!?生まれたばっかなのにもう職業まで決まっていますか!しかも勝負の世界ですか!

理由は簡単です。爺ちゃんはジョッキーが高給取りであることを知っていたのです。私の稼ぎで自分が楽をしようとしているのです。シンプルです。

バクチは大好きですが、ものすごく弱かったようです。
家庭なんかは二の次、三の次。仕事だってまともに続いたことがありません。

そんな爺ちゃんが転んで怪我をして、入院した直後に認知症にかかりました。
そして彼はここから本領を発揮し、ある意味で病院のアイドル的存在に成り上がります。

爺ちゃんは案外、歌が上手でした。人の迷惑も顧みずに病室で浪曲を唱えていたようです。
「爺ちゃんあれ歌ってよ」などと看護婦さんからちやほやされ調子に乗って歌っていました。

看病している母に対して

爺ちゃん 「あの金はどこに置いたかのぅ」
母    「あの金っちゃ、どの金ね爺ちゃん。爺ちゃんは一銭も持っとらんばい」
爺ちゃん 「こないだ宝くじで当たった一千万円じゃ!(怒)」


もちろん当たっていませんよ。というか買ってもいません。

母  「こないだ換金して郵便局に入れといたばい」

こういう所、私の母は臨機応変です。


ある日私が爺ちゃんのお見舞いに行った時の話です。
爺ちゃんは私を一度私の父と勘違いします。まぁこれはお約束みたいなもんですが。
その後突然

爺ちゃん 「あそこにひっかかっとる玉を取ってくれんかのぅ」
私    「・・・・・・」


一瞬意味が分かりませんでした。爺ちゃんは病室の隅を指さしています。

皆さんパチンコやったことありますか?時々玉がひっかかって渋滞状態になったりすることがあります。そういうときは台をダンダン叩くのはルール違反。おとなしく店員さんを呼んで対処してもらう必要があります。

爺ちゃんは病室の隅につまったパチンコ玉を見ていたのです。しかもまたしつこいんですよ。何回でも私に「取ってくれ」と頼むのです。
私はわざわざ病院の椅子の上に立って、なにもない虚空を手でほじくります。ひょいひょい。

私    「じいちゃん、取れたばい」

病室でもパチンコに興じる男。本当に好きだったんでしょうね。

とにかく私の爺ちゃんは男としては全然ダメ。私の婆ちゃんは見合いだか紹介だかで爺ちゃんと結婚しましたが、結婚した後にその紹介者にわざわざクレームを言いに出かけたこともあるとか。
よく私と父で「俺たちには爺ちゃんの血が流れとるけんな」としみじみ語り合い、その度に自らを厳しく律する誓いを立てている次第です。

今年の正月も爺ちゃんの思い出話で大いに盛り上がりました。今後もそのエピソードを小出しにして参りたいと思います。