マルクスの資本論の向坂逸郎訳4冊本は今も読まれずに
2階のトイレ入り口傍の書棚の一番下の段に収まっている。
相等以前に芦屋の古本屋で安く買った。
その当時、既に、マルクスは顧みられていなかった。
哲学は世界の解釈学でもなく、哲学史?を記述するものでもない。
マルクスは哲学者でも経済学者でもなく、
学者をはみだした男ではないのか?
世界を変えていく必要性を痛感し、そのために、
当時の資本主義の原理を
資本論で解明したのであろうと思っている。
革命は彼が想定した発達した資本主義のもとにおける
議会制民主主義を通じては起こらなかった。
革命を恐れ、資本主義も改良された。
これらの理といえるものは、今だからこそ言える類のものと思う。
おそらく、いかなる天才でも、先の見通せない時代になったと思う。
よくもまあ、マルクス主義(マルクスの考えとは相等乖離している)
は続いたものである。ときに粛清による恐怖政治を通じて。
これはマルクスが想像もしていなかった暴力革命によって
社会主義国が誕生した宿命なのかもしれない。
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> 田坂広志 「風の便り」 四季 第60便
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> 「変革の情熱」に潜むもの
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> 昔、ロンドンの郊外のハイゲートという場所にある、
> 小さな墓地を訪れたことがあります。
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> その墓地の片隅には、
> 20世紀の歴史を変えた、一人の人物の墓が、
> ひっそりと佇んでいました。
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> その墓の墓銘碑に書かれていた、
> 一つの言葉を思い出します。
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> 哲学者たちは、これまで世界を解釈してきたに過ぎない。
> しかし、大切なことは、それを変革することである。
>
> 不思議な説得力を持った、この言葉。
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> この墓に眠る、カール・マルクスの言葉が
> 力強い「言霊」となって、
> 20世紀の世界を「変革の嵐」の中に巻き込んだのでした。
>
> 「社会主義革命」という嵐です。
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> しかし、この革命の壮大な歴史的実験は、
> 20世紀の最後に、脆くも挫折していきました。
>
> いま、その歴史を静かに振り返るとき、
> この魅惑的な言葉の奥深くに、
> 密やかな性急さが潜んでいたことに、気づきます。
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> この世界を変革すること。
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> 我々は、しばしば、
> そのことに情熱を奪われるあまり、
> 大切なことを、忘れてしまうのかもしれません。
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> この世界の理を知ること。
>
> その大切さを、
> 忘れてしまうのかもしれません。
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> 2002年12月19日
> 田坂広志