気まぐれ何でも館:(622)曽宮一念詩歌集 雲をよぶ(7)
  
 黒神の瓦礫まじりの荒土にイモ植えて住む人のやさしさ
  
 縛られて猪の子担がれ鳴きもせずこんな可愛い奴を食うのか
  
 鰯雲馬肥ゆるにはなお暑し秋刀魚(さんま)もまじり空に秋立つ
  
 虫の音の良さにつけても人間の牝牡共に声の貧しさ
  
 火の国と呼ばるる阿蘇の根子岳の蔭につららの太く垂れたり
  
 縁先でリンゴ啄(つい)ばむすずめたち首をかしげてテレているらし
  
 何ごとも疑い深き巳(み)の年といやがられたが今は抜け殻
  
 若草の妻は老いたり背を曲げて髪は霜枯れ声もしゃがれて
  
 迎え火に魂(たま)帰り来る夕べにも夏の嫌いな俺は来ないよ
  
 画空ごとその良きものは真(まこと)より遙かにまさりあなあなかしこ
  
 年ごとに首かき鎌を持つ死婆は我が門(かど)すぎて友をつれ去る
  
 体中うれしくなりし正月を何であんなかわけがわからぬ
  
 土用干に俺の臍の緒見て思う直には会わぬ母の形見と
  
 ヘナブリも種子切れとなり店仕舞これから暇を何で潰そう
  
15.2.7 抱拙庵にて。