気まぐれ何でも館:(621)曽宮一念詩歌集 雲をよぶ(6)
  
 旅に来て行きつ戻りつ雁木(がんぎ)道越後言葉の母の声きく
  
 蜜蜂の羽音熟れ麦げんげ田に老いたる我も春なやましき
  
 よぼよぼな年齢九十の坂をよじ息たえだえにへなぶりを詠む
  
 駆けて行く時の速さよ息切らせあと追う我をかえり見もせで
  
 妻老いて若きにましていとしきに口うとくなり手も足も目も
  
 人まねをしたきことありこれからね俺は死ぬよと言いし露伴を
  
 己は巳(み)子(ね)は山の神紙を食う羊の娘亥(い)の年の孫
  
 釘ぬきで舌ぬく閻魔(えんま)おそろしく嘘つけぬ児になりにけるかも
  
 相聞の歌書きおれば腰曲げておらのことかと婆は喜ぶ
  
 年ごとに減るは野の花鳥と虫増える空き缶からおけの声
  
 食軽く酒盃小さく色淡く人を妬まず糞金溜めず
  
 茅屋に婆と娘は鄙(ひな)育ち爺はへなぶり相聞を詠む
  
 この上に地震来るとかその前に涅槃(ねはん)を得たしあなあなかしこ
  
14.12.13 抱拙庵にて。