気まぐれ何でも館:(620)曽宮一念詩歌集 雲をよぶ(5)
  
 春浅き麦踏む乙女裾あげて後ろ手姿走り描きする
  
 敷島の素人心を人問わば朝日に光る野辺の露かな
  
 役立たぬ俺に似たれど砂山は日照りに耐えて飲み食いはせじ
  
 通り過ぎひき返し来る神鳴りのわが屋の上に立ちどまるとは
  
 雁わたる空を仰げば幼き日負われし人の肩をおもほゆ
  
 佃島(つくだじま)汐かぐわしき海澄みて潜れば龍の落し子に会う
  
 黄昏(たそがれ)の蝙蝠(こうもり)のごと古町を手足羽ばたき夢に舞いゆく
  
 子規詠みしいちはつ菖蒲かきつばたあやめもわかず紫に咲く
  
 あじさいは幼きころの新川に真(まこと)の母を思いつつ見し
  
 港町足にまつわる鳩の群豆を食わずに雑魚(ざこ)をついばむ
  
 立ち食いの雑魚の丸揚朝飯にゴヤのマハ見にプラドに走る
  
14.12.6 抱拙庵にて。