気まぐれ何でも館:(617)曽宮一念詩歌集 雲をよぶ(2)
  
 年たちて刻める文字は柔らぎぬ旱(ひでり)の墓を雷雨が洗う
  
 花は野に乙女は里に匂えども夕映え空にしくものはなし
  
 荒庭に人こそ見えね秋鳥の小ゲラ啼きつつ窓よりのぞく
  
 佐渡の春海辺に群れる野仏の肩寄せ合いて転(うた)た寝をする
  
 さがり眼の母を思わす石仏(いしぼとけ)港の辻にほほえみて立つ
  
 峠路に立つ石仏円(つぶ)らなりいくさに往きし子を撫ずるごと
  
 磨崖仏(まがいぶつ)手にて撫ぜれば胸もとに愛らしきゆび印(いん)結びおり
  
 春寒し枯荻のこる明日香川「すぐ岡寺」の石文立てる
  
 ひめむかしよもぎは世にもやさしき名わが家に似合う貧乏草なれど
  
 梅雨聞きて眠る今宵はあじさいの静かな青を夢に見んかな
  
 持てば手がいつまで臭き毒だみのスペードの葉に白の十字花
  
14.11.14 抱拙庵にて。