気まぐれ何でも館:(616)曽宮一念詩歌集 雲をよぶ(1)
  
 曽宮一念は東京府に生まれた。本名は下田 喜七(しもだ きしち)。大下藤次郎、藤島武二、黒田清輝に指導を受ける。東京美術学校卒業後は山下新太郎に師事し、中村彝に兄事する。1914年、文展で褒状、1925年、二科展で樗牛賞を受賞、二科会、独立美術協会所属ののち1946年に国画会会員となる。1965年、視力障害のため国画会を退く。1971年、両眼失明のため画家を廃業。以降文筆や書、へなぶり(短歌)をはじめる。「平野夕映え」「裾野の雲」などの風景画で知られる。文筆にも優れ、1959年に『海辺の熔岩』で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。(Wikiより)
  
 火の山の円く小さく可愛きは女童(めわらわ)のほど阿蘇の米塚
  
 火の山の裳裾(もすそ)はやさし幼児の慕いとりつく乳母の裾に似て
  
 村を焼き海たぎらせし溶岩の湾に浮かべる舟静かなり
  
 流れきて茂るガジュマル垂れる根をキビナゴ泳ぐ潮が洗う
  
 遠きより担える水をむさぼりしわがいやしさを恥じて歌よむ
  
 燃える富士箱根も燃えしいにしえの足柄みちの空を夢みる
  
 山毛欅(ぶな)高く姫沙羅(ひめしゃら)赤く雪白く姥子出湯(うばこいでゆ)は滑らかに澄む
  
 富士に立つ烟(けむり)の噂待ちわびてわが画に黒く烟を描く
  
 水海(みずうみ)に漂う雲を描きつつ姫妻籠めの古歌にほほえむ
   (足立註:水海=宍道湖、古歌=八雲立つ出雲八重垣妻籠みに・・・)
  
 新川(しんかわ)の酒倉の香にむせびつつ息をこらして隠れんぼうせし
  
14.11.8 抱拙庵にて。