気まぐれ何でも館:(612)岡野弘彦(飛天)(19)
ことごとく葉おとしはてし楢山の夜山ひびくを聞きて寝むとす
柿くひて痢を病むわれの枕べに声おとろへて鳴けるこほろぎ
目も耳も欠けて道祖神(くなど)の立ちいます榎の下に陽はとどききぬ
はるかなる子らの鋭声(とごゑ)のひびきくる草生に伏して時ながく経つ
盲(めし)ひたる犬ゆらゆらと歩みきて陽あたる土に身を長くのぶ
師と住みし叢(くさむら)隠居夜のへやにわれを呼びたまふ師の声きこゆ
道とほく見おろす坂に手をふりて別れし日より三十年(みそとせ)過ぎぬ
海原のかなたに沈む今日の陽を世の果つる日のごとく見まもる
戦ひに征く日ここに別れむと手握りし父の掌は乾きゐし
若者はもつと怒れと思ひつつのどかにつづく論を聴きゐる
亡き父を思ひあぐねて芦原のはてに沈める湖(うみ)を見にきつ
14.10.10 抱拙庵にて。
ことごとく葉おとしはてし楢山の夜山ひびくを聞きて寝むとす
柿くひて痢を病むわれの枕べに声おとろへて鳴けるこほろぎ
目も耳も欠けて道祖神(くなど)の立ちいます榎の下に陽はとどききぬ
はるかなる子らの鋭声(とごゑ)のひびきくる草生に伏して時ながく経つ
盲(めし)ひたる犬ゆらゆらと歩みきて陽あたる土に身を長くのぶ
師と住みし叢(くさむら)隠居夜のへやにわれを呼びたまふ師の声きこゆ
道とほく見おろす坂に手をふりて別れし日より三十年(みそとせ)過ぎぬ
海原のかなたに沈む今日の陽を世の果つる日のごとく見まもる
戦ひに征く日ここに別れむと手握りし父の掌は乾きゐし
若者はもつと怒れと思ひつつのどかにつづく論を聴きゐる
亡き父を思ひあぐねて芦原のはてに沈める湖(うみ)を見にきつ
14.10.10 抱拙庵にて。