気まぐれ何でも館:(610)岡野弘彦(飛天)(17)
たそが れて茶の花しろき背戸の庭しのび泣く母の背に負はれつつ
梅雨の夜の濡れし畳に軍刀をふりかぶりふりかぶりわれを追ふ父
せんだんの花のむらさきほむらだつ夕べ耐へがたく人に逢ひにゆく
野の花の白きしたたり夜目に燃えをとめはこよひ身ごもりぬらし
ごろすけほう心ほほけてごろすけほうしんじついとしいごろすけほう
遠き世に斎(いつき)をとめを葬りたる森をしぐれの音すぎてゆく
黒髪のみだるる水に潜(かづ)き入り肌冴えざえと冷えゐるをとめ
すめろぎの神のをとめは身を病みて夜ごと眠らずなりゆきにけり
朝雨のさ霧にけぶる菖蒲田に風たてば夢の花ゆらぎたつ
春ぜみは地に沁むごとく鳴きしきり身のくやしさの時すぐるなり
蕗の葉の下にひそみて飢ゑふかくゐる神ならむわれを誘(おび)くは
牛の目の横向くときにあらはるる肉色のひだ見つつかなしき
髪長きアイヌの翁ふつふつとキリストの愛を説きて倦まざる
14.9.22 抱拙庵にて。
たそが れて茶の花しろき背戸の庭しのび泣く母の背に負はれつつ
梅雨の夜の濡れし畳に軍刀をふりかぶりふりかぶりわれを追ふ父
せんだんの花のむらさきほむらだつ夕べ耐へがたく人に逢ひにゆく
野の花の白きしたたり夜目に燃えをとめはこよひ身ごもりぬらし
ごろすけほう心ほほけてごろすけほうしんじついとしいごろすけほう
遠き世に斎(いつき)をとめを葬りたる森をしぐれの音すぎてゆく
黒髪のみだるる水に潜(かづ)き入り肌冴えざえと冷えゐるをとめ
すめろぎの神のをとめは身を病みて夜ごと眠らずなりゆきにけり
朝雨のさ霧にけぶる菖蒲田に風たてば夢の花ゆらぎたつ
春ぜみは地に沁むごとく鳴きしきり身のくやしさの時すぐるなり
蕗の葉の下にひそみて飢ゑふかくゐる神ならむわれを誘(おび)くは
牛の目の横向くときにあらはるる肉色のひだ見つつかなしき
髪長きアイヌの翁ふつふつとキリストの愛を説きて倦まざる
14.9.22 抱拙庵にて。