田坂広志 「風の便り」 特選 第155便
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二人の科学者
鍋の底に少し水を入れます。
その鍋を下から加熱すると
何が起こるか。
まもなく水が沸騰を始め、
鍋の底から気泡が浮かび、
やがて、秩序だった蜂の巣の形をした
六角形の構造が生まれてきます。
日常、何気なく我々が見ている、素朴な現象。
しかし、その何気ない現象を見て
一つの問いを抱いた科学者がいます。
「なぜ、この世界には、
秩序や構造が、自然に生まれてくるのか」
この問いを抱いた科学者の名前は、
イリヤ・プリゴジン。
外から働きかけなくとも、自然に秩序や構造が生まれてくる現象。
「自己組織化」の現象に関する研究で
1977年度のノーベル賞を受賞した科学者です。
しかし、このエピソードを聞くとき、
我々は、もう一人の科学者を想い出します。
リンゴが木から落ちるという素朴な現象を見て、
「万有引力の法則」を発見した、ニュートン。
このニュートンとプリゴジン。
世界を「巨大な機械」と見たか、
世界を「大いなる生命」と見たか。
その思想において対極に立つ二人の科学者に
共通するものが、一つあります。
センス・オブ・ワンダー。
自然の不思議に、驚く心。
その驚きから生まれた問いを
生涯、抱き続ける心。
その心の力を、我々は、
「天才」と呼ぶのかもしれません。
2004年7月26日
田坂広志
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まあ世の中の人は誰それは天才だといって彼我の違いを自己弁護することなきにしもあらずですが、自分は自分なりに人事を尽くせば良いと思うのですが。