=======================================================
 田坂広志 「風の便り」 特選  第154便
=======================================================

 風景の余韻


 遠い昔、米国の西海岸にある
 小さな町を訪れたときのことです。

 瀟洒な家並の美しさとともに、
 海に沈む夕陽の美しさでも知られた町です。

 夕方、町の外れにある海岸に出て、
 遠く水平線を望む岩場に腰を下ろし、
 夕陽が沈むのを待ちました。

 天空を横切った太陽が、
 海を赤く染め、輝きを残しながら
 水平線の下に消えていく。

 静寂の一瞬。

 その余韻を胸に、
 立ち上がり、帰ろうとしたとき、
 気がつきました。

 多くの人々が、辺りの岩に腰を下ろし、
 静かに、その夕陽を眺めていたのです。

 老夫婦や恋人、家族や友人、
 様々な人々が、その場にいて、

 誰一人、会話をせず、音を立てず、
 静寂に包まれて、その夕陽を眺めていたのです。

 その光景が、
 いまも、心に残っています。

 そして、
 その人々の姿が、教えてくれました。

 余韻に、身を委ねる。

 素晴らしい風景と巡り会うとき、
 いつも、そのことの大切さを、思います。

 2004年7月19日
 
  田坂広志

========================

ライオンでも象でも夕陽をじっと見ていることがあるらしいですね。