気まぐれ何でも館:(604)岡野弘彦(飛天)(11)
頬(ほ)に痛く砂漠の砂の飛ぶゆふべ草はむ馬は耳伏せてゐる
首垂れて砂漠の風に立ちつくす馬そのままに夕ぐるるなり
騾馬追ひて砂をたがやす百姓の鬚しろじろと風に吹かるる
砂原に日は照りみちて音もなし駱駝のむれの二つあひ寄る
唇に血を垂らしつつ刺もちし草むさぼりて飽くなき駱駝
地の骨のごとくそばだつ山脈に陽は照りしらみひだ深く見ゆ
砂原に砂もてきづく小(ち)さき塚人を葬りし跡かすかなる
敦煌の街日暮るるおそき土の上に影ながく引きて人は働く
数かぎりなく飛天(ひてん)は空をあまがけり地に楽の音のわきたつところ
つらなりて飛天のをとめ飛ぶみればはろばろとしてして心はあそぶ
とこしへの闇のもなかに眠りゐる女ほとけの顔照らし見る
首折れて立てるほとけの手指みな細ほそと天をさしゐるあはれ
14.8.9 抱拙庵にて。
頬(ほ)に痛く砂漠の砂の飛ぶゆふべ草はむ馬は耳伏せてゐる
首垂れて砂漠の風に立ちつくす馬そのままに夕ぐるるなり
騾馬追ひて砂をたがやす百姓の鬚しろじろと風に吹かるる
砂原に日は照りみちて音もなし駱駝のむれの二つあひ寄る
唇に血を垂らしつつ刺もちし草むさぼりて飽くなき駱駝
地の骨のごとくそばだつ山脈に陽は照りしらみひだ深く見ゆ
砂原に砂もてきづく小(ち)さき塚人を葬りし跡かすかなる
敦煌の街日暮るるおそき土の上に影ながく引きて人は働く
数かぎりなく飛天(ひてん)は空をあまがけり地に楽の音のわきたつところ
つらなりて飛天のをとめ飛ぶみればはろばろとしてして心はあそぶ
とこしへの闇のもなかに眠りゐる女ほとけの顔照らし見る
首折れて立てるほとけの手指みな細ほそと天をさしゐるあはれ
14.8.9 抱拙庵にて。