気まぐれ何でも館:(592)高野佐苗(二上ふもと その二) (第8回)
  
 言葉より行ひを見よと言ふなれど雪雲覆ふ二上の山
  
 入りゆけば茨も朽ち木も足とらむ遠く望めばもみぢする山
  
 いつまでもつづく悲しみ年毎に滅び芽ぶけるもぢずりの花
  
 見残せし夢のつづきの如く咲く辛夷は山の中腹にして
  
 影踏みに遊び興じし幼きは月の光のあやしさ知らず
  
 思ひ遂ぐるといふもはかなし昨日の蝉今日は落ちゐて蟻に引かるる
  
 極まれる思ひ爆ぜたる柘榴の実秋の日差しは斜めより射す
  
 時雨走り琵琶湖の上の淡き虹老いては老いの夢あるを知る
  
 たわいなく母の部分を見透かされ老いたる日々を子供等が言ふ
  
 呼び戻すすべなきものが過去ならむ河原の薄穂たけて吹かるる
  
 初冬には手術をさるる身と知るも明日あるごとく冬支度する
  
14.5.10 抱拙庵にて。