気まぐれ何でも館:(591)高野佐苗(二上ふもと その二) (第7回)
  
 我が傍へ過ぎたる人の多くして中の一人かと子を思へり
  
 鞭うたれ先を争ふ競馬うま遅れし馬を画面は見せず
  
 描きたる思ひと違ふ一世過ぎ掲げし旗を静かに下す
  
 来し方を風に変へつつ二上の峰に落ちゆく陽に向きてゆく
  
 トランプの占ひしつつ夜となるいつまで繰るもよきカードなく
  
 四半世紀生きゐてくれし末の子に小さき鯛の陰膳をする
  
 吹き抜ける風の思ひにしなひつつ竹は落ち葉を降らすふるさと
  
 朝夕に仰ぐ山脈いつの日かあなたの街に花買ひゆかむ
  
 ボーナスで子が買ひくれし歌語事典めくれば過去が鮮明となる
  
 いつしらに金木犀も散り果てぬ静かに冬を待つほかはなし
  
 性善説性悪説など思ひつつバスに乗り合ふ人にもまるる
  
 蜻蛉の薄羽ねをもちて飛ぶやうな女ひとりの生き様ならむ
  
2014.5.3 抱拙庵にて。