気まぐれ何でも館:(590)高野佐苗(二上ふもと その二) (第6回)
  
 むざうさに畦にころがる大根が花をつけたり茎よぢれつつ
  
 菜殻火の消え残りたる温もりを静に置きて土は鎮もる
  
 花びらを水面にとどめ流れゆく淡く過ぎたる妻の座ありき
  
 見過ごししこと多く来し坂の道たとへば野ばらやえごの花など
  
 ある時は鬼ともなりて子に向かふ思ひにそひえぬ世界をもてば
  
 得る物は少なき故に愛しめと教へ給ひて逝きて仕舞ひぬ
  
 落ちて来し松毬坂をまろびゆく我が来し方と行くへの如く
  
 来し方の余韻の如き乳房あり過ぎにし日々を夢となしつつ
  
 界隔ち逝きたる人がそれぞれに悔いといふ荷を手渡してゆく
  
 生ひ茂る雑草の中に生れたる小さき蛇を我がうちに飼ふ
  
 あかときを目覚めさせたる鳥の声異性を呼ぶと聞きて春なる
  
14.4.26 抱拙庵にて。