気まぐれ何でも館:(589)高野佐苗(二上ふもと その二) (第5回)
  
 右の手と左の手とを絡ませてひとの手の如眺めてゐたり
  
 いつまでもつづく長あめ陽を乞ふも子等と棲まぬを賢明とせり
  
 白萩は乱れて野分に散り舞へり来し方いつも実ることなく
  
 ゑんどうの莢に包まるる豆の如かた寄せ合ひし父ははの家
  
 棒を持ちまだ青き栗の毬をむく戦後を語る秋の夜のふけ
  
 各々が部屋へ入れば老い母は独りテレビにもの言ひてをり
  
 ひぐらしは木群の陰に鳴きつづき淡々として時雨降りつぐ
  
 彼岸花湧き出づる如く咲き盛る野辺の仏は今日はおはさず
  
 葉の陰にカボスの青実ふくらませ秋はしづかに更けんとすらむ
  
 こほろぎの息やはらかに鳴き隠り地の底深く秋はしみゆく
  
 きぬぎぬの情け知りゐむ道綱の母はいかにか虫の音聴かむ
  
 白骨となりせば美醜もあらざらむ今現し世の湯にひたりをり
  
14.4.19 抱拙庵にて。