気まぐれ何でも館:(586)高野佐苗(二上ふもと その二) (第4回)
  
 いづこより来りていづれに帰りゆく窓辺過ぎゆく旅行者の声
  
 菊焚けば菊の香立ちて漂へり我はいかなる煙とならむ
  
 たれ込めし雲が持ち来る梅の香に包まれをるも生ける倖せ
  
 花びらが踊るが如く地を這へりそのたまゆらも花の命と
  
 いくつもの橋ある町に移り来て夕かげに舞ふ蝙蝠を見つ
  
 トンネルを抜け来て浴びし初夏の陽を不意に恐れて立ちすくみたり
  
 憧れし花いっぱいに包まるるは柩に入る時かと思ふ
  
 食べて寝て働きつづけて終らむを人の一世と知りて侘びしき
  
 生きてゆく私が在りて黙々とうづくまりつつ雑草を抜く
  
 蟻あまた変身なさむ蝉の子に群がりをるも各々の運
  
 角とれて丸くなりたる河の石潮騒近き水底にあり
  
14.4.12 抱拙庵にて。