気まぐれ何でも館:(586)高野佐苗(二上ふもと その二) (第2回)
  
 諦めねばならぬ思ひもうらがなし畦の小川に笹舟流す
  
 母として何なして来し迷ひ入る子犬は膝に少し重たく
  
 青嵐が落としてゆきし柘榴の実思ひとげ得ぬ堅さを持てり
  
 我が中のをんなの部分が否定する我が子ながらも男さび居て
  
 隔たりて男さびゆく子供等を微分積分解く如く観る
  
 母を食ひ太りてゆける子の思考男さびつつ隔たりを増す
  
 迷ひ入るトンボを窓辺に追ひ詰めしことになりたり逃さむとして
  
 地球儀の裏側に蟻が迷ふさまじつと見てゐる秋深き夜
  
 教養では食へぬ世の中技術もて生きよと子等に言ひつつさびし
  
 赤まんま玩具の椀に盛りてゐるままごと遊びの母よく笑ふ
  
 陽に向きてシャボン玉飛ばし遊ぶ子等消ゆるを夢といつ知り初めむ
  
 野の仏しづませて咲く曼珠沙華その夜の夢は母に連なる
  
 極まれる思ひの如き柘榴の実裂けて冷たき雨に濡れつつ
  
14.3.30 抱拙庵にて。