気まぐれ何でも館:(585)高野佐苗(二上ふもと その二) (第1回)
  
 もの狂ひともなりがたき不倖せ芙蓉の花は酔ひつつ終る
  
 諦めもある日は苦し風となり花野に行かむ山越えて見む
  
 人の手に委ねて定まる我がゆくへ夜明けの前の河を渡れる
  
 重き荷をほつと下ろせば片付けの仕事が待てる我の名は母
  
 霧降りていよいよ秋も深まれり子は恋人を母に見合はす
  
 欺くも諒解得むとなせる子の思ひは母より恋人にあり
  
 寒風が障子のすき間入り来る恋を得し子に心は見せず
  
 細流の音の高まる春にして子は恋を得て変りてゆけり
  
 曼珠沙華自づと決めし根の位置に花を咲かせて松の木の下
  
 ぬるき湯に肩までつかりゐることも倖せといふことかも知れず
  
 しんしんと雪降り積もる春の朝独りの目覚めまた潔くする
  
 いづこにか帰りてありや今日の日を北に向かひて飛びし鳥あり
  
14.3.23 抱拙庵にて。