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 田坂広志 「風の便り」 特選  第133便
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 天使が通り過ぎるとき


 いま、天使が、
 我々を祝福して
 通り過ぎていった。

 何人かで楽しく会話をしているとき、
 一瞬、誰からも次の言葉が発されず、
 その場に沈黙が訪れることがあります。

 そうしたとき、西欧の国々では、
 誰かが、この言葉を呟き、
 会話を再開します。

 初めてこの言葉を耳にしたとき、
 それは、一瞬の沈黙で生まれた気まずさを
 巧みに和らげる智恵であると思いました。

 しかし、歳を重ねるにつれ、
 この言葉に、
 深い意味を感じるようになりました。

 人と人が出会い、
 楽しい会話や、心に残る会話が生まれる。
 それは、素晴らしい一瞬。

 しかし、
 たとえ会話が生まれなくとも、
 その場に沈黙が訪れようとも、
 それは、やはり、素晴らしい一瞬。

 人と人が出会い、
 かけがえのない
 ひとつの時を、共にする。

 天使は、
 その一瞬を祝福して、
 通り過ぎていったのです。

 2003年12月8日
 田坂広志

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僕はしゃべくりで、その素晴らしい一瞬があまりないんですよね。