気まぐれ何でも館:(583)濱田廣介遺稿歌集 (9)
  
 大阿蘇の山みな閉ぢてふもとばら雨降りしきる杉の木立に
  
 火の国の秋暑き日を旅ゆきて火のけむり吐くあその山見る
  
 谷の栗林のくるみ山かひの岩手をゆけば秋づきにけり
  
 花巻のすすきの道はやぶを行き林につづくきつねいでこよ
  
 石の上越す谷水のまるみをば見とるる一人山の旅なり
  
 曇り空夕かたまけてはらはらと雨こぼれ来ぬ蕗の葉の上
  
 飯坂の一夜の宿りゆあみして眠れば夜半に春の雪降る
  
 書きをへてこころたらへるさまにきくくらきとのもの秋の山風
  
 けさ見ればはやも色づく山ふぢのしづ枝の古葉風にたへつつ
  
 白樺のみきはひよづる山ふぢのうれの青葉に秋の風吹く
  
 いしたたき鳴き渡りゆく高はらの入日はあかくわがかげをひく
  
 山荘(やまのや)のやねにおちくるさよしぐれいたくなふりそいねがてにして
  
14.3.7 抱拙庵にて。