HSBCに飛び火? 中国の「理財商品」ついにデフォルトへ
(週刊文春 2014年2月27日号掲載) 2014年2月20日(木)配信

 中国の銀行が売りまくった高リスク投信「理財商品」は、総額数百兆円にものぼるが、いよいよ「サブプライムローン問題の再来」(証券幹部)の様相を呈してきた。

 最初の激震が走ったのは1月末。中誠信託(北京市)の理財商品「誠至金開1号」がデフォルトしかかった。中誠信託が中国工商銀行を通じて集めた約30億元(約520億円)の理財商品の投資先であった山西省の石炭会社が経営危機に瀕し、投資家への返済が行き詰ったのだ。山西省も工商銀も「支払いを肩代わりしない」と明言。初のデフォルトになりかけた。だが期日直前、当局の意向を受けたとされる「謎の投資家」が理財商品を買い取り、元本は返済され事なきを得た。

 しかし、危機はさらに続く。2月中旬、吉林省信託の理財商品の融資先である民営採炭会社(山西省)が経営破綻し、理財商品の返済が滞る事態に。

「山西省政府と同社が戦略的再建案に署名したため、取り付け騒ぎはひとまず収まった」(中国紙記者)が、約9億7000万元の発行残高のうち、期日が到来した約7億6000万元あまりが返済されておらず、残りも月内と3月に返済期限を迎える。同社には他に5つの信託会社が融資し、融資総額は50億元以上に上る。

 こうした状況は、「1998年の広東国際信託投資公司の破綻を彷彿とさせる」(メガバンク元国際担当常務)。

 97年のアジア通貨危機で中国の不動産価格は暴落。地方政府の意向を受け各種の開発プロジェクトに資金供給していた投資信託公司が相次いで破綻した。

広東国際信託投資公司はその代表格。同社に融資していた邦銀も巨額損失を抱えた。中国政府の「暗黙の元本保証」と高利を謳(うた)い資金を集め、一挙に破綻する構図は、理財商品と瓜二つだ。

 すでに不気味な動きも浮上している。世界第二の資金量を誇るHSBC(香港上海銀行)が預金引出制限に乗り出したのだ。預金者は資金の使い道を示す証明書を提示しなければ下ろせず、その額も50万円に制限されている。

「HSBCは歴史的に中国と密接な関係を持つ銀行。理財商品のデフォルト懸念を暗示しているようで背筋が寒くなる」(市場関係者)。理財商品のデフォルトは、世界経済崩壊の引き金になりかねない。

文/森岡 英樹(ジャーナリスト)

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なりかねないというより、なるでしょう。