気まぐれ何でも館:(578)濱田廣介遺稿歌集 (4)
たらちねのみおやの里にわれはゆく山みな青きみなづきのころ
父母となみ居やすけくわが墓もここにさだめむ山青き村
ちる日なくただかくあれや夕ぐれの風なき山のさくらもみぢば
ふるさとの山の入り日の秋ふけしかげいとほしみ立ちながめつつ
ふるさとの山のあきかぜさよふけの目ざめにきくか木の葉かそけく
をさならのなかにまじりてあきの日のぼさつのごとく君あるらむか
めでたしや新らし太郎うまれ出て母はバサマに父はヂサマに
みちのべのあしび折り来てさえだにもいもはこふらし奈良の春日(はるび)を
朝庭にきたり尾をふりせきれいは石たたくかもわがうたふとき
朝顔の夏はすぎにしつるにしてあすも咲くらむむらさきの花
日のひかり消ゆるさにはにしづもりて八つ手花玉いよよましろく
朝の日の光かげろひまた照ればさにはあかるきつはぶきの花
14.2.1 抱拙庵にて。