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 田坂広志 「風の便り」 特選  第124便
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 「長所」の定義


 牛乳を「発酵」させると「ヨーグルト」ができる。
 牛乳を「腐敗」させると「腐った牛乳」ができる。

 では、「発酵」と「腐敗」の違いは、何か。

 教科書には、こう書いてあります。

  「発酵」も「腐敗」も、微生物が有機物質を分解する性質。

  そのうち、
  人間にとって有益なものを「発酵」と呼び、
  人間にとって有害なものを「腐敗」と呼ぶ。

 この「微生物の性質」に関する定義を読むとき、
 我々は、その「客観性」を超えた「人間中心」の定義に、
 密かな驚きとともに、ある微笑ましさを感じます。

 しかし、この定義をもう一度深く読むとき、我々は、
 それが、ある「隠喩」であることに気がつきます。

 この「微生物の性質」を論じるときの「人間中心」の視点は、
 我々が「人間の性質」を論じるときの「自己中心」の視点を
 教えてくれるようにも思えるのです。

 「微生物の性質」を見るとき、我々は、
 人間にとって有益なものを
 「発酵」と呼び、
 人間にとって有害なものを
 「腐敗」と呼びます。

 同様に、

 「人間の性質」を見るとき、我々は、
 自分にとって有益なものを
 「長所」と呼び
 自分にとって有害なものを
 「短所」と呼んでいるだけなのかもしれません。
 
  2003年9月15日
 田坂広志
 
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自他にとって有益なものが本当の長所でしょうね。

自分にとって有益な性質が他人に有害な場合もありますからね。